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炎を担う処罰の天使(2)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・展開次第でハーレムもあるか?

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 四足城塞は、脚を思わせる部位の底からエネルギーを吹かして浮遊している。

おそらく見張り用の塔なのではないか?城塞の正面にあたる門が開くと、口径が成人の身長ほどもある砲身が現れた。

それと同時に、周囲の空間が城塞の力で上書きされていく。


 真紅の海が、墓石の様なビルの群れで覆い尽くされた。

現代日本のそれとは異なり、頂点が円錐を描いている。通行人は存在せず、建物群も息をしていない。

大天使の世界から唯一光源が消え、暁達の周囲に闇が舞い降りた。

少年達が驚いている間に、城塞はエネルギーの集束を終えた。質量を得たような闇を、城塞から放たれた黄金の閃光が斬り裂く。


 軌道上から退いた魔物達の背後を、ビームカノンが通過する。

後退する事で直撃を躱したクシエルの体表を、熱風が撫でた。ビームが去った後、軌道上にあった建物は、腰から上が消える。

クシエルの視界が金色で覆われた頃、紫の槍が雨のように降り注ぎ、大天使の左腕を甲冑ごと持っていった。


 クシエル目がけて押し寄せる魔物と異能者を、炎の雨が迎え撃つ。

大天使は距離を取りつつ、撤退を視野に入れる。本来、クシエルが宣言を行った時点で、北区平安の集落は煮えたぎる血の河フレジェトンタに落とされるはずだった。

それが別位相に、異界として展開されている――道隆のパワーにより、大天使といえど自由に干渉できないのだ。


「武器を捨てろ!汝らもまた、かつて子羊であったろう!聖なる道を思い出すがいい――!」

「あぁ!?しゃしゃり出てきて、ごちゃごちゃうるせぇ!!」


 暁は恫喝とともに、クシエルに風刃を見舞った。

炎の雨は、紫の皮膚を持つ有翼の人型によって打ち消され、彼らには届かない。

右腕の鞭を伸ばすも、封印剣の騎士に斬りつけられると、年月を経た麻縄のように両断された。

炎に変化させ、再生を試みるも、断面は戻らず、鞭は戻らない。


(信仰が切れたか…!)


 クシエルの武器は、右腕の鞭のみだ。

カマエルらのように得物を持たない。その代わり、全身を炎に変える事が出来る。

青い甲冑の青年は、青白い炎に姿を変えた。想定より戦闘による消耗が大きい。

くわえてこの空間。信仰の供給が細くなっており、消耗が補給を上回っている。

おそらく、これが最後の一撃と覚悟して、クシエルは特攻を仕掛けた。


(せめて一人――!)


 セダンを呑み込むほどの火球が、亮典と暁に迫る。

紫の人型――秩序の破壊者が、2人の前に立ち、クシエルより一回り大きな火球を目の前で炸裂させた。

轟音が鼓膜を震わせる。爆炎は少年達にも襲い掛かるが、魔物達に防いだ。宙に出現した黒煙を突っ切り、青白い炎が突進する。


 クシエルは紫の悪魔を弾き飛ばし、亮典に迫る。

暁が彼を乗せて後退していたが、そのスピードを上回る速さの突撃だ。

羊頭の鼻先に触れようかと思った瞬間、天使を構成する霊力の全てに、四方から圧が加えられて空中に縫い留められる。

それと同時に、異空間内に異能者の気配が出現する。


(こいつは、カマエルが最後に戦闘した子羊)


 この異端者こそが、自分達の最大の敵。サタンのもどき。

彼の姿が現れるよりわずかに早く異空間が砕け、暁と亮典、そしてクシエルが夜の北区平安に投げ出される。

クシエルは炎となって道隆に迫るが、彼の手刀から放たれた不可視の破壊が、その身体――霊の核まで砕いてしまった。

霊体への干渉力を備える異能者に対し、物理的な力のみで挑もうとしたのは、クシエルの落ち度だ。


 クシエルが倒された時点で、僅かに残っていた天使の群れも退いていく。

道隆は留守を守ってくれたことに礼を言い、亮典は自身の魔物を預ける慎重さを讃えた。

咲世子は保険教諭の背中で眠っている。変身を解いた暁が、口を開いた。


「それはいいんだけどさー、お前」

「?」

「こいつら名前くらい付けろよ!呼びにくいよ!」


 名前か、考えた事はある。

しかし、名前は人の本質を表すと映画で見た事があるし、真の名を知ることで悪魔を支配下における…はずだ。

それによって良からぬことが起きる可能性を考え、控えていたが、他者に預けるならそうもいえないか。


「それは悪かった」

「名前、つけるんですか?」

「そうだなー…考えてはいたし丁度いいかも」

「アンドラステだ。お前はアンドラステ」


 道隆は封印剣の女騎士を見て、はっきりと言い放った。

その瞬間、彼の内側に変化が生じた。ごく小さく、軽いものが自分の身体から剥離した感覚。

アンドラステと名付けられた魔物は、父親に礼を言うと、北区平安から走り去った。3人の異能者は、言葉を失ったまま、それを見守る。


「…ごめん」

「いや、うん。いいけどさ」



 丸の内の聖堂、最上階の広間で2体のローブ姿が向き合っていた。

セラフィエルとラミエルである。最も有力な天使のうちの4体である彼らは、名古屋に人知れず降り立ち、その在り様を深く嘆いた。

彼らは街に根を下ろし、自分達の権能を振るえるよう教団を組織した。ソドムを思わせる魔の土地に残された人々を拾い上げるために。

しかし、集めた力の多くが喪われ、同じ時期に降臨した2体はこの街で散った。その例は未だに還らない。


「もはや看過できん。私は出撃する」

「…待て。ラミエル」


 立ち上がったラミエルを、セラフィエルが押しとどめる。


「どうした、何故止める!」

「我々は思い違いをしていたのかもしれない」

「…どういうことだ」


 セラフィエルは躊躇いがちに切り出す。


「まだ動くべきではない、と言っている」

「貴様は、そもそも乗り気ではなかったな。続けろ」


 落ち着きを取り戻したラミエルは静かに座り、聞く態勢に入った。


「もし父なる主がこの地を滅ぼすと決めたなら、直に裁きが下るだろう。我々が遣わされるとしても、この程度の軍勢ではあるまい」

「…確かに。天使とは名ばかりの、雑魂を寄せ集めた身体だものな」


 天使の身体は、階級が上がる程神秘を帯びる。

最下級のエンジェルならともかく、熾天使ともなれば、その髪の一本に至るまでエーテルの輝きで構成される。

それがこの土地を漂う正体不明の力――残留思念のような淀んだ霊的物質で満たされているとあっては、本来の力は発揮できるはずがない。


「劣化した身体とはいえ、カマエル、クシエルを討たれてなお、啓示が降りてこない」

「……つまり、裁きではなく監視せよと」

「そうだ。この聖堂に集った子供たちを、通りに放り出すわけにいくまい?」


 この土地の惨状は目を覆わんばかりだが、この程度で済んでいるともいえる。

地獄の門が開いたようだが、現れた妖魔どもは、愛知県の外には出ていない。

まだ、ラッパを鳴らすには早いと、判断しているだろう。来たるべき日に万全の体力で戦う為に、教団の拡大に注力するべきではないか。


「それもそうだな」


 残った2体の天使達は、頷き合う。

この夜以降、天使達が異能者を襲撃することは無くなった。

信者の警備のみを行う彼らの姿は、すぐに丸の内以外で見かけられることが無くなり、大部分の異能者は安堵の息をついた。


ありがとうございました。

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