北区平安に新入りを入れますか?-5人目の住民-(5)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
「それで連れてきたんですか?」
「いやー…」
「どうするんだよ…」
3人――異能者である少年2人は、咲世子と白貌の女性ゾンビを見るや苦い顔をした。
道隆が連れてくるまでの経緯を説明すると、頭を抱えそうになる。
杏子だけは、息子より小さな少女に対して、憐憫の様なものを示している。
彼女はチョコレートスナックを大皿に開け、温かい紅茶を出す。
女ゾンビもスムーズな動きで、スナックを摘まむ。にこりともしない様は、見ようによっては面倒臭がっているように思える。
「咲世子ちゃん。お母さんか、お父さんは一緒じゃないの?」
「おかあさん…、おかあさん、おとうさんって、何?」
冗談を言っている表情ではない。杏子は返答に困った。
「親の事。一緒に暮らす年上の人で、仲が良かったり、悪かったりは人によって違う。親から見ると、咲世子ちゃんは子供って言う。血が繋がっていても、繋がっていなくても関係ない」
道隆が言うと、3人も小さく頷いた。
「血が繋がるって?」
「混じるっていうか、同じ部分がある事…だな」
「同じじゃなくても関係ないの?」
「血が繋がっていても…喧嘩する親子もいるし、血が繋がっていなくても仲のいい親子もいる。人それぞれだよ」
道隆が言うと、咲世子は考え込むような表情になる。
彼自身は、人付き合い全般でストレスを感じるタイプだ。折り合いをつけるようにいつも努力しているが、基本的に道隆の中でしか通じない常識を奉じている。
「おとうさん、おかあさんはいない。最初は一人だった」
ヤバい、と判断した亮典は即座に話題を変えた。
住む場所を尋ねると、小学校に住んでいると答える。
「咲世子ちゃん、よかったらこっちに引っ越さない?」
「いいの?」
「勿論。ね?」
「おー、いい…よ」
結果については予想していたので、驚きはない。
問題はあの屍鬼の群れだ。何体いるのか知らないが、あれをすべて受け入れねばならないのか?
病気が流行りそうなので、遠慮したいのだが、そのまま口にすると機嫌を損ねそうだ。
暁が目線だけで、ゾンビの処遇を切り出せ、と告げてくる。
「お友達って、何人くらいいるの?」
「えー、わかんない……186人だってー」
保険教諭が顔を近づけると、少女もそちらに顔を向けた。
彼女は人数を把握していたらしい。その程度の規模なら、マンション一つ、二つに押し込めば十分受け入れられる。
数を増やされたら困るが……言うべきか?暁や亮典に視線を送ると、目が合った。
こちらの意図を悟られたらしい。暁に至っては、唇を動かして道隆を促している。
「…あのさ、そのお友達って、まだ増やすの?」
「増やさないよ、先生以外はお喋りしてくれないからつまんないし。なんでー?」
「他所から来た人が恐がるからさ」
「お客さん?わかった。じゃあ、お友達は増やさない」
「その代わり、私の友達になって?お兄さん」
「いいよ」
咲世子は無邪気に笑う。
しかし、一般人である杏子の表情に脅えが浮かぶ程のほどの凄みを、部屋いっぱいに放った。
友達、の肩書が恐ろしいが、学校から連れ出したのは自分だ。責任は持たねばならない。
ゆえに、拒絶する選択肢はあり得ない。それを選ぶときは、彼女と闘う時だ。
(父上、この少女はあどけない容姿をしているが、三対の羽根持つ者よりも強いぞ)
(なんでそんなのが、近所に住んでるんですかねぇ…)
少女はお茶とお菓子の礼を言ってから、道隆の袖を引く。
「女の子のお友達もいるんでしょ?紹介してよ」
「お、おお…」
道隆が立ち上がると、保険教諭も立ち上がる。
咲世子は道隆の前を歩き、玄関に向かう。亮典の気の毒そうな視線に見送られながら、牧野家を出た。
マンションの前を走る道路に、道隆はキャラメル色のクラシックカーを呼び出そうとしたが――寸前で私物を詰め込んでいる事を思い出す。
彼が呼び出したのは、二頭立ての馬車。
黒い肌の御者が、天蓋つきの車両を背に搭乗を待っている。
巨大な箱の両側には窓とドアがついており、振動を抑える機構が備えられている事から、乗り心地は良い。
3人は楽に座れるだろう。
「すごーい!お兄さんにもお友達がいるんだー?」
「…そんなところだ」
咲世子は零れるような笑みを浮かべて、道隆を讃えた。
面映ゆい一方、これが反転する時を思うと、素直には喜べない。
道隆は咲世子に請われ、早苗達に連絡を取る。修児含む4人に咲世子を紹介し、ババ抜きをして遊んだ。
ありがとうございました。