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丸の内、天使の座

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 康一が起こしたイザコザで、中警察署は大きな変化を強いられた。

駐車スペースが2階部分まで達する壁で隠されている。多門櫓に近い造りになっており、治安維持局のメンバーが交代で詰めていた。

長大な回廊の中で、眼鏡の青年と不良風の若者がパイプ椅子に座りながら会話している。


「天使の座?」

「そう、近所にも来ててな、注意されてもガン無視で、一般人を勧誘してんの」

「局長は?」

「警戒してるよ、ただなぁ…」


 若者――市村和成は大儀そうに息を吐いた。

異能者が向かうと、2対の翼を持つ騎士が10人単位で集まってきて、袋叩きにされる。

辛うじて犠牲は出ていないが、被害に遭った局員はまだ復帰しない。

一般人の局員が出向くと、天使や信者――スカーフやバンダナなど、純白の品を一点身に着けている――に勧誘される。


 戦闘の痕跡は、美童の姿をした天使らが修繕しているそうだ。

遠目で見た限りだが、小さい菜園や牧畜場なども設けられている。

一コミュニティで自給自足できそうだが、信者でも人込みに紛れる事は可能だ。

異能者の感知能力をジャミングするらしく、内部の様子は肉眼で確認できる範囲でしか、明らかにされていない。


「俺の場合はどうだろうな」

「省吾が?あぁ、確かに…」


 省吾は異能者ではない。

外に出ていった友人の異能者から、変身能力を貸与されているだけだ。

希望を含んだ観測だが、すぐに始末はされないだろう。


「行く気か?」

「局長が言うならな。…市村も来るか?」

「おーい!男2人で何こそこそ喋ってんだー!?」


 近づいてくる異能者の気配に、和成は気づいていた。

回廊の角から現れたのは、大木のごとき体躯の若い女。

鋼と形容するに相応しい筋肉の鎧に反して、目鼻立ちは整っていた。

好奇心をありありと浮かべるその顔は、まるで少女のよう。三枝茜さえぐさあかねは2人のそばで足を止めた。


「丸の内の教会ッスよ、天使が大量に集まってるって」

「あぁー、アソコかー」

「茜さんも興味あります?」


 こみちゃんに釘差された、と茜は不貞腐れる。

彼女は7月の異変が起きるまで、地下格闘技のリングに出ていた。

異能者となってからも、殴っていい奴――悪事を働く異能者を狩って回っていた所を、維持局のトップ2人、正史郎と岬に引き抜かれたのだ。

天使の巣とあらば躊躇なく乗り込むだろう、と和成は考えている。この解答は、2人の男に驚きをもたらさなかった。


「この前のレインボーズ以来、誰も来ないしさー」

「来なくていいっしょ…」


 3人はしばし、最近の名古屋について話し合う。

しかし、北区平安に関心が向くことは無い。個人の意思に知らず干渉されていると、紀里野道隆の存在に気づかない限りは。


 交代の時間になり、省吾は局長の元に向かうがあいにくと留守だった。

代わりに見かけたのは、グレーの制服に身を包んだ女性。出るところは出て、くびれるべき所はくびれている。

制服の上に戴かれた顔も負けず劣らず。知性のなかに艶やかさを内包した、麗しい顔立ちの女――小宮山岬。

彼女は省吾の提言を聞き終えると、右手を肩の位置まで持ち上げた。


「?」


 首を傾げる省吾の前で、掌に白金に輝く首飾りが出現した。

四角にカットされたプラチナのチェーンに、長いひげを蓄えた男性の横顔を象ったヘッドが繋がれている。


「丸の内教会の調査を許可します。局長には私から言っておきましょう。ただし、こちらを装備して下さい」

「…いいんですか?」

「えぇ、あの場所が気にならない異能者はいません。先日の巨大怪物のような騒ぎが起きないとも限りませんし」


 省吾は首飾りを受け取ると、首にかける。

冷やりとした質量感が、肌着の中に滑り込む。


「あぁ…そうじゃありません」


 岬が首にかかったネックレスに、そっと指で触れた。

柔らかな感触にどきりとしたのもつかの間、激痛が首回りを襲う。

植物の根が骨と筋を食い破っていくような感覚が消えた時、省吾は全身から汗を拭き出していた。


「い、いまのは…」

「装備、と巷では呼ばれています。肉体とアイテムが接合された状態を指すそうで、外すときはとても痛いと、報告されています」

「はぁ…、これに何の意味が?」

「この首飾りは取り出さずとも、身に着けているだけで効果を発揮しますし、このほうが天使に見つかる危険性も減るだろうと考えまして」


 岬の微笑に、悪びれた様子はない。

これは電話で言う子機のようなもので、維持局は6つ所有している。

子機を身に着けた人物の視聴覚を、親機にあたる冠を装備した人物は盗用することが可能だ。


「私といたしましては、潜り込ませるなら貴方の様に異能者の力を振るえる一般人ではなく、普通の局員の方が良いと思うのですが…」

「いえ、俺が行きます!」

「わかりました。骨は我々が拾いますので、隅々まで調べ尽くしてください」


 省吾は頭を下げて、副長の前から去った。

すれ違った和成に、岬との会話内容を明かしてから、退出。

阿久津が所有している、久屋大通公園近くのマンションに帰った。

生家は山王にあったのだが、夏の異変で壊滅したのだ。家族は省吾を残して全員死亡。

封鎖の外で新生活を始める気にもならず、彼は名古屋に留まった。逃げ出すみたいで、気に入らなかったのだ。


ありがとうございました。

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