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王都防衛ー7

 帝国軍の魔装機神投入に始まった王都防衛戦であったが、数で劣りながらも王国軍側の奮戦により戦線は膠着状態にあった。


「団長、帝国の魔装機神が引いていきます」


王国の魔装機神と熾烈な戦闘を繰り広げていた帝国側の魔装機神が、一体また一体と後方に下がっていく。


「稼働限界か。よし、こちらも引き上げさせろ。今のうちに搭乗魔装騎士を交代させるのだ」


 魔装機神の稼働限界が指し示すもの、それは装備や装甲の損耗を除けば操者の魔力の枯渇を意味している。

 魔装機神は搭乗者の魔力を増幅し可動する巨大魔装具の一種だ。

 魔力を燃料とし稼働する魔装機神の一番の弱点は、搭乗者の魔力がいつかは切れるということにつきるだろう。


 本来帝国軍兵士―俗称で魔族と侮蔑を持って呼称するが、スヴァルトアーム地域に住まう南方の民族は、北方に位置する王国民より総じて魔力保持量が多い傾向にある。

 そのため魔装機神の稼働制限時間も、同様の条件下で戦闘が行われれば王国側に不利になるはずであった。

 そこでローランドは、配下の魔装機神部隊に先んじて防御を徹底させた。

 それはあくまで壁として敵魔装機神を城壁に近づけないための作戦であり、そこに生じる不均衡にあっては、ローランド自らが精鋭騎士数十名を率いて要所を援護する事で均衡を保ったのである。

 そこにカインツを頭数として、指示をだしていたのは当然の事であった。

 そして開戦前の会話こそ、カインツをして挑発めいた言葉こそ彼を動かすにたると確信しての事であったのである。


 カインツとて、そこは古くからの付き合い。

 状況が切迫しているからこそ、あえて言葉尻とは裏腹にローランドを助けるように各所で援護に回っていたのであった。



 そして戦況が、著しく変化を見せた。

 魔装機神の後詰めとして追走していた帝国歩兵部隊には、騎兵一千による局所的突撃を敢行する事で、一時的に隊列を崩すことには成功していた。

 あくまで数の上で劣勢の王国軍が、魔装機神の稼働限界まで歩兵を城壁に近づかせないのが目的であり、そのための即応攻撃としては大いに役目を果たしていたのではある。

 しかし魔装機神の後退という局面において、帝国軍の動きに変化がみられつつあった。


 魔装機神の後退と同調するように帝国軍から重装歩兵が前面に押し出される。

 横陣をひく帝国歩兵部隊と重装歩兵の間に、魔導弓兵が強固な盾と化した重装歩兵に守られて展開していく。

 その動きに呼応するように、王国軍も城門から迎え撃つべく出てきていた、騎士三千と歩兵五千の部隊が横陣にて展開を終えつつあった。

 そこに後退してきたローランド達残存騎兵が合流する。


「騎士団、前面に並列隊形。盾を構えよ!」


 ローランドの指揮のもと、騎士達が構えた大型の盾を地面に付きたてる。

 それは隙間なく王国軍の前面を覆い尽くし、まるで一個の長い塀の様相を呈していた。


「防御結界展開。一斉射来るぞ!」


 騎士達が防御結界を盾に纏わせるやいなや、待ち構えていたかのように帝国側から煌びやかな光が無数に打ち出された。

 それは、魔導弓兵の持つクロスボウに似た兵器から打ち出される魔法の矢であった。


 彼らの持つクロスボウには個別の魔法術式が刻まれており、魔力を保持している者が扱えば、術式構築することなく各々のクロスボウに依存した魔法の矢を放つことが出来るように作られていた。

 そのため帝国軍では、精神情報野の容量が少ない一般兵士であっても場面に応じた運用が可能な兵器としてひろく採用されていたのである。


 無数の魔法の矢が、騎士団の盾にぶつかり弾ける。

 あるものは、着弾と同時に炎を吹上げ。

 あるものは、盾を凍りつくさんと霜を振まく。


 だが帝国から放たれた魔法の矢は、ことごく結界と盾に阻まれ王国兵士を傷つけることはなかった。

 そしてそれが、これから始まる凄惨な戦いの幕開けとなったのである。


「全軍突撃ぃ! 王都の豚どもを蹂躙し尽くしてしまえ!」

「王国の勇士達よ、奴ら魔族共をそのねぐらに追い返してやるのだ!」


 二射目に必要な魔力を装填する僅かな時間に騎士団が、突撃しようと盾を引き倒す。それを読んでいた帝国軍も、あえて魔法弓兵による斉射ではなく、自ら歩兵部隊による突撃を敢行してきた。


 帝国重装歩兵と、王国騎士団がぶつかり合う。

 それを切掛に、戦場は止めどない乱戦へと突入していった。


「坊っちゃん、俺達もそろそろ行きやせんか?」


 各所でぶつかり合う兵士達を、カインツの息子ブロムと三人の弟子達が後方で眺めていた。


「リゲルド暫く待ちなさい。若が、吟味してくださっているのだから」


 クランが、戦いに参加したくてうずうずしているリゲルドを嗜める。

 催促されたブロムは、目を細め何かを探すように戦場を見渡していた。


「う~ん、良し決めた。あれにしようか」


 何かに目をつけたらしいブロムが、ある一団に指をさす。

 敵味方入り乱れる戦場にあって、分散した王国騎馬隊だけを重点的に標的としている部隊がそこにあった。

 双頭魔狼(オルトロス)と呼ばれる魔獣に跨った帝国兵十騎が、その機動性を活かし十人分隊となって戦場に散らばっている王国騎馬隊に襲いかかっている。

 彼らは、揃って軽装で僅かな防具しか身に着けず、武器といえば、両腕の手甲に短剣を一体化させた手甲剣のみであった。

 

「そら、お仕舞っと!」


 帝国七魔人の一人シルヴィルフが、騎乗する騎士に飛び乗ってその首を手甲剣の一撃で刺し貫く。

 周りでも同様に、騎士達が馬上でシルヴィルフの配下に惨殺されていた。


「よし、お前らとっとと次行くぞ。やっと身体が暖まってきたしな」


 暴れる馬の背で、シルヴィルフは気にすることなく身体を伸ばす。

 ご丁寧に馬の背から自分の双頭魔狼(オルトロス)に飛び乗る際には、置き土産とばかりに馬の首をはねて飛ばしていった。


「さて、次はどいつらを……。んっ?」


 次の標的を見定めようとしていたシルヴィルフの前に、先程までそこにいもしなかった一団が目に入った。


「どうも、帝国軍の皆さん」


 突然自分の双頭魔狼(オルトロス)の前に、一人の青年が飄々と近づいてきた。

 二つの頭を持つ魔狼が、くぐもった唸り声をあげ近づいてくる愚かな人間を威嚇する。

 通常の魔狼よりも一回りも大きく、人間など丸呑みにされそうなその大きな口を前に恐怖を感じない者など皆無であったろう。

 だが目の前の青年は、腰にさした刀に手をかけるでもなく、平然と双頭魔狼(オルトロス)の鼻先まで歩み寄ってきた。


「なんだてめぇは? どこぞの貴族の小倅が、頭湧いてやがるのか?」

「いやぁ。お姉さんの戦い方が、その……とても美味しそうで」


 自分を見上げる青年――ブロムがにっこりと笑顔を浮かべる。

 まるで戦場に似つかわしくないその笑顔に、シルヴィルフは言いようもない悪寒を感じた。

 次の瞬間――

 眼前に、長年慣れ親しんだ相棒である双頭魔狼(オルトロス)の跳ね飛ばされた首が飛び込んできた。


「てっ、てめえぇええええ!!」


 双頭魔狼(オルトロス)の首から、大量の血が吹き上がる。

 瞬時にシルヴィルフも、双頭魔狼(オルトロス)の背から飛び退った。


「ブッ殺す! この七魔人が一人、色欲のシルヴィルフ様を舐めやがったことを後悔させてやる」

「うんうん、シルヴィルフさんか。本当に僕の好みにピッタリの女性だ。さあ、楽しもうよ」

「うるせえええぇ! ニヤニヤ笑ってんじゃねえ」


 ブロムの緊張感のない態度と馬鹿にしたような言動が、シルヴィルフの怒りを頂点に押し上げる。

 怒りに顔を真赤に染め上げたシルヴィルフが、飄然と佇むブロムに襲いかかっていった。


「なあ、坊っちゃん、あれってあれか?」

「そうね、多分あれね」

「あれであるな……」


 後ろで一部始終を黙って見ていたリゲルド、クラン、ブルーノの三人が、一様に困惑した表情を浮かべる。


「まあ、俺らは残りを片づけるとするか」

「そうね、若の邪魔にだけはないないように気をつけないと」

「触らぬ神に祟りなしであるからして……」


「「はあぁああ……」」


 三人は大きなため息をつくと、それぞれ武器を構え残りの双頭魔狼(オルトロス)に向かっていった。


 

次回はブロム回となります。

感想、評価絶賛おまちしております。

作者にテンションをあげあげにしてやってください。

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