第二話「そこは主役のポジションです」
ジェイドとかいう無駄に美形野郎が、ハーレムから抜け出して私の枕もとに座る。
うーん…、ここで惚れたりしなきゃいけないパターンなのか?
もしもこの世界が前世の創作物とかだったりすれば、恐らくチョロインである私はこいつのハーレムに取り込まれてしまう。
――気分は魔王と戦う勇者だ。気分だけは。
だが、これは負けイベントじゃない…そうだ、私には中の人がいる!AIとは違うんだ。
「…さてと、気分はどうだ?」
「……自分にもよく分からない」
「ふーん…じゃ、何で空から降ってきたんだ?しかもそれで大怪我」
「分かってたらさっきの幼女に言ってる」
「幼女?…ああ、クリスのことか」
「クリスというのか、あのボクっ娘は」
「……へぇ、この世界にもそういう文化は存在するのか」
…は?格好つけるな。
この世界「にも」――って、転生してきたみたいに言うな!
って、あれ…?
「……この世界にも?」
「あぁスマン、忘れてくれ」
いや、私は一般市民でなく、魔法の使えない現代社会の日本人なのですが。今は違うっぽいが。
――にしても、やばそうな事実が判明した。
もしや、この世界って転生者がそんなに珍しくない感じなのか?
それともあれか、こいつと私の二人だけが偶然出会った…って、それじゃ私は確実にオトされるじゃん。
だけど、こいつがチート系御都合主人公であれば猫型ロボット並みに活躍するだろう。
「…なぁ、ジェイド…とかいったか?」
「ん?何だ?」
「私さ、前の記憶が全然無くなってんだけど…どうすりゃいいと思う?」
私はそう言って、主役気取りのこいつに問題を課した。
ハーレムの中心たるもの、このくらいは解決してみせよ!…というのがひとつで、
とりあえず主人公補正で何とかしてくれ、私は語り手やるから…というのがふたつ。
にしても、私はこんなにハーレムに執着する奴だったのか?こんなヒロイン嫌だ……。
「う…ん、そうだな…。」
ジェイドは首を捻り、考えているような仕草をしてみせる。
早くしてくれ。寝てるだけで私は暇してるんだ。
「――とりあえず、治ったら俺らと一緒に来ないか?」
「……お前らと?……どこに?」
「決まってんだろ、パーティー組まないかって言ってんだよ」
「ぱーてぃー…あー。それで、メンバーは?」
「クリスが回復役で、俺が戦士、もう一人双剣使いがいる」
「幼女がいるのか。決めた、今日から我らは仲間だ」
わざとらしく私は言ってみせた。
幼女がいてもいなくても、恐らく私はこいつに着いて行ってたハズだ。
もしこいつが日本人だろうが他からの転生者だろうが、私と同じ境遇なのには変わりないからな。
…ハーレムのありなしという、大きな違いはあるが。