信吾先生の転勤
ある日、信吾先生が小学校から人事異動を受けました。
信吾先生は、今年の4月から勝どき町の隣町である
有家町の小学校に転勤が決まりました。
信吾先生は、ひとみとありさがお世話になった先生です。
そして、私の幼なじみでもある美津子さんに再会させたことで
家族付き合いをさせていただきました。
「すずちゃん、信吾が学校を代わっても
私たちの付き合いはいつもどおりだよ」
「おみっちゃん、転勤になるとは思っていなかったわね。
しかし、五島とか離れたところでの転勤でなくてよかったわ」
「それは、信吾から校長先生に話していたんだよ。
秀樹を勝どき町で育てていくことにしているから
自分の転勤があれば、秀樹と離れない町での学校がいいと
希望を出していたんだよ。
実はね、以前明菜の飼い主が五島に転勤したって話しただろう?
本当は、その話は信吾に来たんだよ。
その話が出た時、信吾は断ったんだよ。
秀樹が中学に入ってテニス部に入ったばかりで、
勝どき町になれてきたのに1からやり直しにしたくないって
そう思ったんだろうね」
「そんな話があったのかい?初めて聞いたよ」
「信吾の代わりに同僚だった明菜の飼い主が、
自分が代わりに行くと校長先生に申し出たそうだよ。
明菜の飼い主は、信吾の親友だったからね。
自分も子供を持つ親だから信吾の悩みを知っていたんだね。
それならば、自分の実家は五島にあるから転勤を承諾したそうだよ」
「そうだね、秀樹くんもそうだけど美沙子さんが勝どき町に
慣れてきただけに、五島の転勤は厳しいことだよね」
「そうなんだよ、転勤を代わってくれた明菜の飼い主に
自分のわがまま聞いてくれてすまないと言って信吾は、
何度も何度も礼を言っていたよ。
教師という仕事を持つと転勤がつきまとってくるからね。
できることなら、勝どき町にある自分の実家で
美沙子と秀樹と暮らしていきたいと思ったんだね。
それに、私やじいさんを心配したんだと思うんだよ。
信吾は、昔から家族思いの子だったからね」
夏美さん、聞きましたか?
信吾先生にも悩みを持っていたんですね。
教職を持ったばかりに転勤が多いのは当然ですが、
信吾先生は美沙子さんと秀樹くんのために
自分の実家近くでの小学校での勤務を決めていたんですね。
そして、自分の両親のそばで秀樹くんを育てていきたいと
思ったのでしょうね。
だからこそ、五島での転勤を断ったのだと思います。
お義母さん、信吾先生が転勤を断ったのは
秀樹くんだけではなく、ありさと別れることがあっては
いけないと思ったんじゃないですか?
ありさと秀樹くんは、仲の良い交際をしています。
そんななかで、二人の仲を引き裂くようなことを
したくなかったと思いますよ。
そうよね、夏美さん。
あなたの気持ちは、よくわかったわ。
母親として、ありさの仲を引き裂くことになると思ったのね。
だからこそ、信吾先生は五島の転勤を断ったのね。
信吾先生の転勤がなくなったことで、
秀樹くんはテニス部で全国大会まで行くことができたわよね。
これから、信吾先生が新しい学校で活躍してくれることを
空から見守ってくださいね。




