ありさのケガ
さて合唱コンクールの練習ですが、毎日昼休みの時間におこなわれていました。
ところが、ある日のこと。
弥生ちゃんが練習に参加していなかったことで様子を見に来た
ありさが教室にいる弥生ちゃんを呼びに来ました。
弥生ちゃんは、ありさに敵意をむき出しにして窓ガラスが割れるくらいの
反動で、ありさを押してきました。
ありさは窓ガラスが割れた時にガラスの破片で大ケガしました。
「先生、ありさがケガした。弥生がガラス割ってケガさせたよ」
ありさの様子を見に来たクラス委員の原田くんが
担任の先生である森口先生と保健室の先生である佐々木先生を
呼んできました。
「ありさ、大丈夫か?これで血を止めておけ」
原田くんは自分の部活で使っている手拭いを巻いて血を止めてくれました。
だけど、手拭いだけでは出血が止まらず白い手拭いが真っ赤に染まっていました。
「こら、弥生逃げるな!全部おまえがやったんだぞ!ありさをケガさせてまで
指揮やりたかったのか?それだったら、オレが許さん!おまえ、ありさに恨みあるのか?
ありさにケガさせて自分が目立ちたかったのか?それだったらオレが絶対に許さん!
この状況をクラスの仲間が知ったら不利になるのは、おまえだからな」
原田くんの大声が廊下に響いたのでしょうか。
秀樹くん、耕作くん、太一くん、剛くんが駆けつけてくれました。
「原田、何か手伝うことないか?」
と剛くんが言葉をかけてくれました。
「剛、悪い。みんなが使っているタオル貸してくれ!
オレが血を止めているが間に合わない!」
「わかった、太一急いでオレと秀樹と耕作のバッグをあけて
タオルを持ってきてくれ。ダッシュして行け!
秀樹、耕作、おまえらのタオル借りるぞ」
「わかった、協力は惜しまないよ」
「ひでぇ血の量だな。ありさ、しっかりしろよ。もうすぐ先生が来るからな」
太一くんは急いで教室に戻り、剛くん、秀樹くん、耕作くんのバッグをあけて
部活で使うタオルを取り出しました。
太一くんは自分のバッグをあけて自分のタオルも一緒に持ってきました。
「剛、これで足りるか?」
「よしっ、待ってろ!これで血が止まるといいがな。
ありさ、手が痛くなるが我慢しろよ。太一、タオル貸せ!
母ちゃんがやっていた止血法をやってみる」
そうなんです、剛くんのお母さんは看護師さんでケガの止血法を見ていたのです。
それから剛くんはまずは自分のタオルを縛って止血をしてくれました。
「どうやらオレのタオルじゃ間に合わない。太一、次のタオル貸せ!」
それから何度も止血をしてくれるうちに森口先生と佐々木先生が来てくれました。
佐々木先生が救急車の手配と校長先生に報告、森口先生は自宅にいる私と
仕事場にいる正也に連絡、そして弥生ちゃんの両親にも連絡しました。
正也は仕事が休憩時間ということで急いで学校に行きました。
ありさは右手首を3針縫う大ケガをしました。
危うく血管を切ってしまうのではないかという大ケガでした。
そして翌日、話し合いの場が持たれました。
正也は急遽有休を取り、私と一緒に学校に来てくれました。
昨日、ケガをさせた現場を見た原田くん、ありさのケガの血を止めてくれた
剛くん、耕作くん、秀樹くん、太一くんも話し合いの場に参加しました。
「このたびは娘がご迷惑をおかけしました」
弥生ちゃんのお父さんはまじめなマジメな人でした。
「なんで、あなたが謝るのよ。そもそもうちの娘に指揮者を代わらなかったから悪いのよ」
「おまえは黙ってろ!おまえが弥生を甘やかすからこういう事態になるんだ!
だいたい、ここに転勤した時から問題行動起こしていたこと恥ずかしくないのか!
オレはな、転勤が決まった時単身赴任でもいいと思ったんだ!
なのに、のこのこと一緒についてきて問題ばかり起こして、どれだけ迷惑かけたら気がすむんだ!
おまえとはもう一緒にやっていけん!転勤した時に問題行動起こしたら離婚するって言ったの忘れたか?離婚届にはお互いの判を押したのをオレが持ってきた。慰謝料と財産分与はなし。
そして弥生の親権はオレがもらう。このことは先生方と今日来ていただいた尾崎さんのお父さんと
おばあさんに立会人になっていただくつもりだ」
「ちょっと待ってください。お怒りはごもっともですが、離婚は弥生ちゃんが可哀想じゃないですか?」
「こいつ(弥生ちゃんの母親です)とはよく話し合って決めたことです。
一度、離婚届を出そうとした時に一度だけチャンスをくれと出すのを思い留まったことがあります。
だけど、自分を悔い改めない態度には目に余るものがありました。
弥生は残念ですが実家の大阪に私の両親が健在ですので、そちらに住まわせてカウンセリングを
受けさせます。今回の大ケガをさせたことへの反省を私の父の下でやっていこうと思います。
それで許していただけますでしょうか?また、娘さんへの治療費は私が出させていただきます」
弥生ちゃんのお母さんは号泣していました。
そうですね、実の子供と離れて暮らすことになるのですからね。
お義母さん、これはご夫婦で話し合ったことですから、しかたがないですよ。
弥生ちゃんは田舎で暮らすより、都会で暮らすのが一番だと思いますよ。
夏美さん、やっぱりあなただったのね。
そうよね、弥生ちゃんはここの暮らしは向いてないのね。
だから、うまく誘導して問題解決をしてくれたのね。
ありがとう、ありさにケガさせて怒って離婚という結果にさせたのね。
夫婦仲がこじれば離婚しかないですよ。
あなたはそう言いたいのね。
よくわかったわ。
このまま、静かに成り行きを見守ってね。




