友達の安否
亡き夏美さんの親友、江口さんが横断歩道を渡っている最中に
交通事故に遭うという悲劇が夜のニュースで報道されました。
思えば江口さんには亡くなった夏美さんの代わりに
学級部長を代行してくれた頼りがいのある存在でした。
そして、神戸から引っ越してきて右も左もわからなかった
美沙子さんをクラスのお母さんたちに溶け込ませてくれました。
それだからこそ、美沙子さんには神戸からきて初めての友人でした。
「美沙子、電話だよ」
「はいっ、すぐ行きます。もしもし、お電話代わりました。
裕子ちゃんが交通事故?えっ?歩いていたところを撥ねられたの?」
「そうなのよ、美沙子さん。今、救急車で出水病院で運ばれたわ」
「それで裕子ちゃんの状態は?」
「それが意識不明の重体だって。家族からもしものために友達を呼んでって言ってた」
「そんな、信じられない。裕子ちゃんがいてくれたから島原で暮らすことできたのに」
「あたしだって信じられないわよ。テレビ番組のニュースに流れるくらいだから
大きな事故だったんだよ。あたしはこれから病院に行こうと思っているけど、どうする?」
「わかったわ、あたしも一緒に行くわ。車はあたしが乗せるから家で待っていて」
美沙子さんはそう言い終わると電話を切りました。
しかし、美沙子さんはしばらく茫然していました。
「おいっ、ばあさん。交通事故って言っていたよな?
事故があった現場がうちの近所の横断歩道だそうだぞ」
「確か、江口さんは隣の町内の家の人だよね?
信じられないね、美沙子のことをよくしてくれた友達なのにね」
「とにかく、美沙子はすぐに病院に行け。信吾にはオレから連絡しておく」
そうなんです、信吾先生にはありさを担任していた5年生の時にお世話になりました。
その時に学級部長を江口さんがやり、副部長を美沙子さんが担当しました。
夏美さん、これもご縁でしょうか?
神戸からきて初めての担任をしたのが、ひとみでした。
そして、ありさも担任としてお世話になるとは思いませんでした。
やがて美沙子さんは江口さんと共通の友人を車に乗せて病院に行きました。
江口さんは救急室に運ばれて手術を受けていました。
ところが、夜勤の先生から江口さんの体の損傷がひどいため、
大村市にある国立病院に搬送して手術を受けることになりました。
「患者様の意識が戻りました。どうぞ、お入りください」
看護師さんの誘導で救急室に美沙子さんはお友達と入りました。
「裕子ちゃん、私わかる?」
「美沙子さんだよね?」
「そうよ、美沙子よ。辛かったね、裕子ちゃん」
どうやら江口さんの意識が戻ったようです。
それからしばらくして信吾先生が来ました。
「江口さん、大丈夫ですか?
よかった、事故に遭ったと聞いたから急いで来たんですよ」
「裕子ちゃん、今は体を治すことを考えてね。優香ちゃんのことは私たちに任せてね」
「ありがとう、美沙子さん。優香のこと頼んだわよ」
それから江口さんはご主人と一緒にドクターヘリに乗って大村市の国立病院まで行きました。
夏美さん、江口さんが無事でよかったわ。
ありがとう、あなたは江口さんに自分のそばへ来るなと言ったのね。
どうか、江口さんの手術が無事に成功をすることを祈っていてくださいね。
頼みましたよ、毎日家の仏壇から祈っていますからね。




