キチママのその後
銀次郎と冬美を助けてる時に美沙子さんは左腕に大ケガをしました。
当然、美沙子さんの仕事は休載になりました。
キチママが空手の有段者だったため美沙子さんの腕にヒビが入っていました。
動物病院に行ってからキチママのご主人は被害届を取り下げてほしいと毎日家を訪ねてきました。
「ママをおうちに帰して下さい」と子供に言わせて頭を下げてましたが、
息子に一任していますからと私は取り合ってきませんでした。
美沙子さんのケガで出版社からも被害届と裁判を辞さないという通告をしたそうです。
当然ながら信吾先生は弁護士を通してくださいと一切無視を貫きました。
「まったく、子供を免罪符に使うなんて最低だね」
「おみっちゃん、お嫁さんのケガの具合は大丈夫かい?」
「美沙子は腕のケガより銀次郎を気にしているよ。あのまま連れ去られたらと思うとぞっとするよ」
「ケガをさせた奥さんだけど、空手やってたんだそうだよ。病院の診断では全治2カ月というじゃない。
息子さんから詳しく聞いてないかい?」
「息子からは美沙子がケガしたって事と出版社から損害賠償を請求したって言ったよ。
損害賠償の他に美沙子自身に慰謝料請求したよ」
「そりゃそうだよね、お嫁さんのお仕事を取られたんだからね」
「おいっ、ばあさん。塩を持ってこい!」
「どうしたんだい、じいさん?」
美津子さんが玄関に行くと例のキチママのご主人が子供を連れてきていました。
美津子さんは勝手口から入って台所から塩を持ってきました。
「すずちゃん、あんたも一緒に加勢しておくれよ」
「わかったよ、これ以上付きまとわれたら迷惑だからね」
「お願いします、話を聞いてください」
「これ以上話をする義理はない。不法侵入で警察呼ぶぞ!」
そう言うと富士雄さん(美津子さんのご主人の名前)はキチママのご主人めがけて塩をまきました。
「帰れ!おまえの嫁のせいで嫁は仕事を休んで治療してんだ。嫁の身体を元に戻せ!
二度と家に来るな!子供を免罪符に使って恥ずかしいと思わないのか!
おいっ、ばあさん。警察に電話しろ!二度と家の敷居を跨ぐな!謝罪は絶対に受けん、わかったか!」
富士雄さんの迫力ある声に動揺したのかキチママのご主人は、
この日をきっかけに二度と来ることはありませんでした。
それから夜になって正也が帰宅してきました。
ところが、正也の帰宅を見計らって昼間のご主人が突然の訪問がありました。
正也に昼間にあったことを話していたので冷静に対応していました。
「お願いします、話を聞いてください」
「母を生死をさまよう程の恐怖を植え付けておいて図々しいじゃないですか?
昼間の出来事は母から聞いています。被害届は取り下げる必要はないと思いますよ。
こちらは家族である子犬を誘拐されそうになったのですから意味はわかってますよね?」
「ママをおうちに帰してください」
「今度は子供を使っての泣き落としですか?水沢さんの家でも言われたと思いますが、
本来ならこちらに来ても被害届を取り下げも謝罪もいらないです。
こちらも母に対しての慰謝料を請求します。よろしいですね?」
そして、亡き夏美さんの実父である弁護士さんに入ってもらい、
「これから先の話し合いは私を通してお願い致します。よろしいですね?」
と私たちの弁護を引き受けてくれることになりました。
夏美さん、ありがとう。
あなたのお父さんのおかげでこの問題にピリオドを打てるとこまできたわ。
後は野となれ山となれ事件に決着をつけるだけになったわ。
どうか、苦しい時の神頼みだけど静かに見守っていてね。
頼みましたよ。




