地震の恐怖
夜に起こった突然の地震で私たちは近くの公民館に避難しました。
心残りは尾崎家のご先祖様をお祀りしているご位牌を家に置いてきたことでしょうか。
夏美さん、お父さん、ごめんなさいね。
自然の災害の恐怖はないものと思っていましたが、このような恐怖はいつあるかわからないのですね。
思えば25年前に起こった雲仙普賢岳の火砕流で大きな災害に見舞ったことが
昨日のことのように覚えています。
幸いに我が家の家族が無事であったことが本当にありがたいと思いました。
あの時は、お父さんがそばにいてくれたから心強かったです。
お父さん、こんな時にそばにいてくれたらどれだけ勇気がもらえたかしら。
やっぱり、私一人ではできないことあるのね。
えっ?おまえには正也がいるだろ!
正也が俺の代わりに頑張っているじゃないか!
お父さん、わかったわ。
私にはまだやることがいっぱいあるのよね。
お迎えが来るまで精一杯頑張っていくわ。
「おばあちゃん、おばあちゃん」
「おやっ、ついウトウトしていたよ」
「母さん、うなされていたけど、大丈夫か?」
「心配ないよ。夢の中でお父さんと話をしただけだよ」
「今夜はここに泊まって明日家の様子を見に行こう」
「そうだね、家に置いてきたご先祖様のお位牌が心配だからね」
本当にそうです。
我が家のご先祖様が無事だろうかと不安でした。
「もしもし?」
「ありさちゃん、今どこにいるの?」
「近所の公民館にいる。お父さんとおばあちゃんも一緒だよ」
「よかった、無事だったんだ。オレのおばあちゃんがすっごく心配していたよ」
ありさの電話の相手は秀樹くんでした。
秀樹くんは自分のスマートフォンでありさに連絡をしてきたのです。
「ありさ、ちょっと代わっていいかい?」
「秀樹くん、おばあちゃんが話あるから代わるね」
「もしもし、秀樹くん心配してくれてありがとう。おばあちゃんに心配ないからって伝えてね」
「わかりました。揺れがまだおさまらないから気をつけてください。
あっ、ちょっと待ってください。おばあちゃんに代わります」
「もしもし、すずちゃん無事で本当によかったよ。熊本ではとんでもない事態になっているから
心配していたんだよ。あんたの家浜のそばだから、津波来たらと思って秀樹に電話してもらったんだよ」
「そうだったの。ありがとう、おみっちゃん」
「避難の時期がどれだけになるかわからないけど、体だけは気をつけなよ」
こんな時に友達からの励ましはありがたいですね。
夏美さん、お父さん、今夜だけ苦しいでしょうけど辛抱してくださいね。
明日は早く帰ってすぐに介抱してあげますからね。
今夜は眠れない夜になりそうです。
神様、どうか家族が無事に過ごせますようにお願いします。




