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おばあちゃん、大好き!  作者: 真矢裕美
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母ちゃんの交通事故

「おばあちゃん、大変だよ。秀樹くんのママ、大ケガしたんだって」

「おやおや、それは大変だね。事故でもあったのかい?」

「車は修理に出していて乗れないから、バスで出かけたんだって。

それでね、バスに乗ろうとした時にドアに挟まれて大ケガしたの」

「そうだったのかい。秀樹くんのママ、びっくりしただろうね」

「乗る時にいきなりドアを閉めようとしたんだよ。誰だってびっくりするよ。

秀樹くんから聞いた時はもう信じられなかった」

「本当だね、運転手さんはちゃんと見ていなかったんだね」

バスの運転手さんには困ったものですね。

一歩間違ったら大惨事になっていたところでしたよ。

考えてみれば、一週間前に長野県でスキー合宿に行く大学生を乗せたバスが

崖から落ちて運転手さんを含めて乗っていた大学生が全員亡くなるという

大惨事があったばかりでした。

今回の美沙子さんの事故はけっして他人ごとではありませんでした。

私は、次の日に美沙子さんのお見舞いがてら美津子さんの家を訪ねました。

「こんにちは、おみっちゃん。孫から聞いたよ、お嫁さん大変だったね」

「さっき、バス会社から謝罪に来て帰っていったところだよ。

菓子折りもらったって美沙子の仕事の保証をちゃんとしてもらえないんじゃ

困るからね。今、息子と一緒に警察に行って被害届出してくるって出かけたよ」

「警察まで呼ばないといけないほどのひどいケガだったのかい?」

「仕事をする時に背中が痛いって言ったんだよ。救急車を呼んで近くの整形外科の病院に運んでもらったんだよ。そしたら。右肩は打撲、左肩と頸椎を捻挫していたそうだよ。こんな大ケガで仕事をやれなんて残酷だよ」

「それは酷い話だよ。そんなにひどいんじゃ仕事ができないじゃないのかい?」

「仕事どころか家事も難しい状態だからね。もう、可愛そうで見てられないよ」

「本当だね、事故の後遺症が残って仕事ができなかったらどうするんだろうね。

お嫁さんの書く小説は面白くて楽しいものばかりだからずっと続けてほしいわ。

それなのに、神様は残酷なことをどうしてするのかね。腸煮えくり返るよ」

「すずちゃん、あたしだって腸煮えくり返っているよ。

これで、後遺症が残って美沙子が仕事ができなくなったら

裁判にでもかけようかって思っているんだよ」

「最悪の場合、そうしたほうがいいね。

お嫁さんは事故で作品が書けなくなったら手足をもぎとられたも同然だからね」

本当にそうです。

私も美津子さんの話を聞いていて自分のことのように腹が立っていました。

夏美さん、あなたもわかるでしょ?

仕事ができなくなるってことがどれだけ惨めなものか。

美沙子さんのケガは今は自宅から病院に通院になっていますが、

ひどくなれば入院になっていたでしょう。

私ね、美沙子さんの話を聞くたびに夏美さんを思い出すの。

どうしてもあなたと重ねあわせてしまうせいかしらね、きっと。

「おばあちゃん、秀樹くんのママに会えた?」

「うん、会えたよ」

「ケガ、ひどかった?」

「そうだね、服でわからなかったけど背中が痛いって言っていたよ。

さて、夕飯の仕度しょうかね。ありさは何が食べたい?」

「ハンバーグが食べたい」

「そうかい、それじゃさっそくつくろうかね」

ハンバーグは夏美さんが生きていた時につくっていた定番のメニューです。

夏美さんが亡くなってから8年過ぎました。

夏美さんの料理の本は古ぼけてきましたが、今でも大事にとっています。

孫たちに母親の味を忘れないようにと工夫して今の味にたどり着きました。

夏美さんが残してくれた孫たちを私が生きている間守っていきますからね。

そして、美沙子さんのケガが1日も早く治りますように見守ってくださいね。



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