母ちゃんの仕事場
秀樹くんの家に遊びに行ったありさがニコニコしながら帰ってきました。
「おばあちゃん、今日ね秀樹くんのママの仕事場を見たんだよ」
「おやおや、そんなことしてお仕事の邪魔にならなかったのかい?」
「少しだけお仕事を見ただけだよ。
本当はお仕事の時は入っちゃダメって言われているんだって」
「そりゃそうだよ。秀樹くんのママはお話を一所懸命書いているんだよ。
お話を書くのに時間と労力を費やするんだよ」
「秀樹くんのママ、怒らなかったよ」
「秀樹くんのママは優しいからね。でもね、お仕事の邪魔しちゃダメだよ」
私は次の日に美沙子さんが気の毒に思い家を訪ねました。
美沙子さんは仕事場にしている書斎に入ったままでした。
その代わり美津子さんが出てきてくれました。
「おみっちゃん、うちのありさが昨日迷惑かけてなかったかい?」
「嫁の書斎に勝手に入ったことだろう?それなら心配しなくていいよ。
それよりも孫さんは本が好きなようだね。いろんな本を置いているから
興味があったんだろうからしからないでやっておくれよ」
「そうかい、おみっちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ。
ありさは本が好きだから書斎にある本に気に入ったものがあったんだね」
「すずちゃん、嫁は締め切りに追われていたから神経ピリピリしていたんだよ。
でもね、秀樹やありさちゃんが来てくれて気持ちが軽くなったと思うよ。
昨日は作品のアイデアが浮かばなくて悩んでいたからね」
「そうだったの。そうとは知らずに昨夜ありさに仕事の邪魔するなって
しかったんだよ。お嫁さんが気の毒だと思ったから」
「もういいんだよ、すずちゃん。今日はアイデアが浮かんだのか朝の用事を
すませてから書斎にこもりっきりだよ。お昼には出てきて何かつくっていく
だろうから心配しなくて大丈夫だよ」
よかった、美沙子さんが怒っていなくて。
ありさ、もうハラハラさせることはしないでね。
「お義母さん、お昼用意しますね」
「美沙子さん、仕事は大丈夫なの?」
「少しは息抜きしまいと窮屈しますからね」
美沙子さんはそう言って台所に立って昼食をつくり始めました。
「どうだい?心配しなくてしなくて大丈夫だろう?」
「よかったわ、元気そうでホッとしたわ」
本当にそうです。
今日の美沙子さんは元気で安心しました。
夏美さん、美沙子さんは今日も元気に仕事をしていますよ。
あなたが生きていたら美沙子さんといいお友達になっていたかしら。
「お義母さん、お昼にしましょう」
「あらっ?今日は4人分かい?」
「調子のってつくりすぎちゃったんです」
「すずちゃん、よかったらご馳走になっていって」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
そして、私は美津子さんと一緒に美沙子さんの手料理をご馳走になりました。
ファミレスで働いていたことがあるだけに味付けもプロ顔負けでした。
「夕飯の買い物まだだから行ってきます」
「締め切りが近いんだろう?今夜はすき焼きをするから心配しなくていいよ。
それに信吾の弁当のおかずなら日曜日に買ったばかりだから大丈夫だろ?
美沙子さん、あんたが頑張ってくれるから助かっているよ。
無理しないで甘える時は甘えていいからね」
そうよね、甘えたい時は甘えたっていいわよね?
夏美さん、あなたが生きている時はいつも私に心砕いてくれたわよね?
あなたがいた時が懐かしいわ。
私はあなたがいてくれた時はとても幸せだったわよ。
今は子供たちも大きくなって独り立ちしようとしています。
これからどうなるかわからないけど、お迎えが来るまで
子供たちを見守っていくわ。




