尾崎家のお彼岸
秋が深まり、今年もご先祖様を奉るお彼岸の日が来ました。
お彼岸には毎年手作りのおはぎをつくりご先祖様にお供えします。
最近では孫たちも手伝ってくれて助かっています。
「おはぎはお仏壇にお供えするんだよ。つまみ食いはダメだよ」
「はーい」
今年はシルバーウィークということもあって
親戚が仏様まいりに来てくれました。
「母さん、こんなに賑やかな彼岸はないな。
夏美も喜んでいるだろうな」
「そうだね。夏美さんも草葉の陰で喜んでいるよ」
「子供たちの成長を見たら夏美は喜んでいただろうな。
子供たちの成長が一番の楽しみだったからな」
「本当だね。この子たちが強くなってくれてよかったよ。
この子たちには夏美さんが母親なんだよ。永遠にね」
本当にそうです。
孫たちにとって母親は夏美さんだけなんです。
息子の再婚話も私が断ってから縁談は来なくなりました。
これでいいのです。
息子自身が再婚の意志がなければ再婚の意味がないことですから。
「おばあちゃん、今日はママが来るんだよね?」
「そうだよ、ありさ。今年はお休みが長いからずっといられるよ」
「ありさね、ママにいっぱい話したいことあるの」
「おやおや、いつまでも甘えんぼさんだね」
「いいもん、ママがいる間だけしか甘えられないもん」
思えば幼稚園の時に夏美さんが亡くなったせいでしょうか。
夏美さんが病気の時、「ママのところに行きたい」と言ってましたから。
小さい時に母親がいなくなったことは寂しいことですね。
今更ながら悲しく思います。
これまで子供たちを育てていかないと思い頑張ってきました。
夏美さんが亡くなってから五年、来年の冬には七回忌を迎えます。
ひとみも中学生になり、ありさも小学五年生になりました。
そして今年は主人の二十三回忌の法事をやりました。
今年の秋はわたしたちにとって忙しい季節になりました。
思えば主人の介護に疲れていた私を助けてくれたのは夏美さんでした。
突然家で倒れた主人を意識が戻るまでついていてくれました、
「今夜がヤマですね」とお医者様から言われた時も諦めずについてくれました。
その時、神様が味方したのか主人は助かりました。
本当に最後まで私を助けてくれた夏美さんに感謝しています。
夏美さん、今日はお月様が綺麗ですよ。
縁側でお月見をしてますが今夜は雲もなく綺麗な夜空です。
あなたと親子になれて私は幸せです。
あなたはいつも家族みんなのことを考えてくれていましたね。
私は嬉しかったわ。
あなたの明るさにどれだけ支えられたかしれないわ。
本当にありがとう。
主人は先にお空に行ってしまったけど、寂しくないわ。
だって、あなたの残してくれた宝物を育てていく使命が残っているもの。
だから、安心してちょうだいね。
ひとみとありさが大人になるまで立派に育てていきますからね。
だから、今夜は一緒にお月様を見ていましょう。
子供たちの成長を祈って・・・。