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おばあちゃん、大好き!  作者: 真矢裕美
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ママの浴衣

今年の夏のお盆に孫たちに浴衣を着せようと思っていました。

浴衣を着せる時期になるたびに毎年知り合いの呉服屋で仕立てていました。

今年はひとみが中学生になったので大人の浴衣がないか考えていました。

そこでひとみに夏美さんの浴衣を着せようと思いました。

これまでタンスにしまっていた夏美さんの浴衣を出してみました。

「これなら大丈夫、これをひとみに着せよう」と私は思いました。

「おばあちゃん、何しているの?」

「ママの浴衣を出していたんだよ。

ひとみ、絵柄が気に入ったら着てみるかい?」

「ママの匂いがする」

「気に入ったようだね」

「おばあちゃん、真樹くんとお祭りに行くの。お祭りの時に着てもいい?」

「もちろんだよ。ママもきっと喜ぶよ」

中学に入ってボーイフレンドができたひとみ。

浅野真樹くん、小学校は違いますが同じクラスになってから

仲良くなったようです。

「ボーイフレンドができたのはいいが、勉強を疎かにするんじゃないぞ」

と正也はひとみを心配しているようです。

中学になるとボーイフレンドができてもおかしくない年頃です。

これはしばらく長い目で見るのがいいと私は思っています。

だって、昔からの諺で言うじゃありませんか。

命短し恋せよ乙女って。

「おばあちゃん」

「おや、ありさお帰り」

「新しい浴衣なの?」

「これはママの浴衣だよ。今年のお祭りに着るんだ」

「ほんとだ、ママの匂いがする」

「ありさもママの浴衣が着たいかい?」

「うん」

「それじゃ、ちょっとまっておくれ」

私はそう言うとタンスからもう一つ夏美さんの浴衣を出しました。

「これを寸法直しして着られるようにしてあげようね」

そう言うと私はありさに浴衣を着せてみました。

浴衣は、ありさの背丈にピッタリとあいました。

ありさは小学5年生のなかで背が高いほうで

大人の浴衣を着れるくらいになったのでしょう。

「どうだい?色柄も華やかでいいだろう?」

「うん、ママの浴衣を着れるなんて嬉しい」

ひとみもありさも夏美さんの浴衣を着ることができて嬉しそうでした。

「ただいま」

「パパ、お帰りなさい」

「もう浴衣の季節か。今年も呉服屋で仕立てるのか?」

「もう仕立てる必要はないよ」

「どうしてだい?」

「今年は二人に夏美さんの浴衣を着せようと思うの」

「夏美の浴衣を着せるのか。夏美は浴衣が大好きだったからな。

浴衣の絵柄も何枚かあったと思うよ。懐かしいな」

「今、着付けしたところなの。見てちょうだい」

私は正也に孫たちの浴衣姿を見せました。

正也は孫たちの姿に驚いていました。

「母さん、子供の成長は早いな。二人とも浴衣似合っているよ」

正也は夏美さんのことをしみじみ思い出していました。

夏美さんが袖を通していた浴衣に命が吹き込まれたのですから。

こんなに嬉しいことはありません。

これから毎年夏に夏美さんの浴衣を着る孫たちを見ることでしょう。

これからどんなふうになるのか楽しみです。

「私は母親ではないですが・・・」と学校の授業参観で口に出るのですが、

夏美さんの親友の江口裕子さんは私を見て

「おばあちゃんは夏美さん以上に頑張っていますよ」と言ってくれます。

また秀樹くんのお母さんの美沙子さんも

「あまり無理はしないでくださいね」と気遣ってくれます。

夏美さん、あなたに美沙子さんを会わせてあげたかったわ。

あなたが生きていたらきっといいお友達になっていたと思うの。

美沙子さんの病気が治って3年がたったわ。

早くに病気が見つかって本当によかったと思うの。

夏美さん、あなたが美沙子さんを守ってくれたのね。

ありがとう、感謝しているわ。

これからも家族仲良く暮らせるように空から見守っていてね。





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