お帰りなさい
「ありがとな..。落ち着いた。」遊夜はそう言うと私から離れた。幼稚園の時は私より小さくて私とよく泣いていて冷や結雅に慰められていたのが嘘みたいだな。「なんか大きくなったね、遊夜。」「は?そりゃ昔と比べたら身長伸びたぞ?何言ってんだ?」「...アホなのは変わらねーな。」「結に言われるとなんかムカつく。」「私はアホじゃない。」「...ソーダネー。」「おい。」棒読みとは。昔の遊夜はどこ行った。戻ってこーい。「で、これからどーすんだよ?」「え、何が?」「何が、じゃねーよ!零歌のことだよ。」「あー、まあこの馬鹿が起きたら考える。」「俊さんとかには言わねーの?」「兄ちゃんも知ってるのか?」「凛斗以外は知ってるな。」当時は凛斗小学生だったしな、と遊夜が言った。2年前だから凛斗は小6か。まあ知らねーのも無理ないな。「とりあえず、とっとと起きろよ馬鹿兄。」私は結雅の頭を殴った。「こいつ寝てるけど一応病人だからな!?」「知らん。」「おい。」
ピクッ
「「は?」」え、今こいつ動いた?「ゆ、遊夜。今結雅動いた?」「奇遇だな。俺も動いたように見えた。」「だよね..。」もしかして私が殴ったから起きた?いやいや、そんなわけないよな?「痛ぇな..。だれだよ、殴ったの...。」な、なんか背後に結雅の声が聞こえるのは幻聴か?私は思いっ切って後ろを振り向いた。「嘘、だろ?」結雅が...結雅が2年間起きなかった結雅が...。「あ、結。どーした?そんなに俺を見て!お兄ちゃんがそんなにカッコいいか!」「...馬鹿、じゃないの?..。」声が震えてる。久しぶりに聞いた声がどうしようもなく愛しく感じた。「ゆい、が..。お兄ちゃん!!」「うお!?」私は結雅に抱きついた。「ゆ、結?どーした?」「お兄ちゃん..よかったよ..。目を覚ましてくれて..。」「...なあ遊夜。」「なんだよ。」「俺今なら死ねる。」「じゃあ死ねよ。今度は永遠の眠りにつかせてやるよ。2年間なんてケチな事言わずにな。」「2年間?俺2年間も寝てたの?」「まあな。あ、俊さんたち呼ばねーと。」「結雅、ごめん。守ってあげられなくて..。ごめん。」「...いいよ。お前は俺の妹だ。俺たちに守られとけ!」その笑顔はやっぱり輝いていて、この世のものとは思えないほどの綺麗で純粋な笑顔だった。
暫くすると兄ちゃんと凛斗と冷が来た。「..結。俺こんな奴ら知らない。冷しか知らない。」「現実を見ろ。」「こんな優等生な奴となんかイケメンな奴は俺の兄弟じゃない。」「..まあ分からんでもない。」「お前ら..覚悟はいいか?」兄ちゃんが殴る準備をしながら言ってきた。「「ゴメンナサイ。」」「ったく。馬鹿じゃん。」「..この生意気なガキ黙らせていい?」「だめ。」「ふん。できるもんならやってみなよ。」「あぁ?上等だこら。てめぇ殺してやろうか?」「お前ら2人やめろって。兄ちゃんに殺されるよ。」「「うぃーす..。」」どっちもがきだよな...。「つーか誰だよ!?お前は!!」「お前は実の弟の顔まで忘れたのかよ!!」結雅の頭に凛斗の拳がヒットした。「ってぇな!!だって思うじゃん!!俺の知ってる凛斗はもっとちっちゃいんだよ!!」「2年もあったら成長するわ!!」「お前らうるせーよ!!」今度は兄ちゃんの拳が2人の頭にヒットした。「つーか!一番変わったのお前だろ!!なんで普通の黒髪長身イケメンになってんだよ!!赤髪はどうした!!」「うるせーよ!俺は優等生になったんだよ!!」「お前みたいなヤンキーは優等生とは言わない!!」「学校では優等生なんだよ!」しばらく兄ちゃんと結雅の喧嘩が収まらなかった。
「なんかこの光景見るの久しぶりだな..。」「うん..。」「昔に戻ったな、結。」「そうだね、冷。」
お帰りなさい、結雅。