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師弟関係と夫婦関係。

お待たせしました!・・・仕事が激烈忙しくて二日ほど家を空けて、昨日の2時ごろに帰宅してまいりました・・・そこから書き続けなんとか終わりました・・・申し訳ないです。


ふぅ。とりあえず寝ます。

宿“湖の畔”まで戻ると、宿の中庭でアイリスとレックスが遊んでいた。アイリスはこっちに気がついたのか走り出して飛びついてきた。


「ちゃんと、良い子にしてた?」


「パパッ!おかえりなさーい!アイリス、良い子にしてたよっ!」


アイリスは嬉しそうに胸に頬ずりしてくる。頭を撫でてやった後、抱き上げてレックスを見やる。


「すまなかったね。ありがとう。」


「いえ、僕も一緒に遊んでしまってましたから。」


レックスは、頭を掻きながら言った。さすが、宿屋の息子なだけはあって面倒見がいいようだった。


「ぱぱー。隣に居る人だあれ?」


アイリスは、隣に立っているシルヴィアをみて首をかしげている。なんと応えればいいのか悩んでいたが、一瞬で決意を決める。


「えーっと、そうだね。ママが出来ました。アイリスのね。」


最初はお世話係とでも言おうと思っていたのだが、アイリスに必要で欲しているのは家族だろうと思って母親にしてしまおうと思ったのだった。

慎の言葉に驚きを見せるシルヴィアがわなわなと震える。突然のことで怒っているのだろうかと思ったがどうやら違うらしい。


「私に娘...私に娘...私に娘...娘...musume...」


おーい、シルヴィさんやーい。戻っておいでー。


「やった!ママだ!よろしくね。」


そんなのお構い無しで抱き上げていたアイリスが降り、シルヴィアへとダイブした。そのお陰なのか虚無の世界へと思考が移行していたシルヴィアがご帰還した。


「アイリスちゃ...ううん。アイリス。よろしくね。」


どうやら、アイリスの笑顔にシルヴィアも敗北したようで頭を撫でながらアイリスと戯れ始めた。


「やっぱり女性には適わないな・・・。」


思わず、頬をかいて苦笑する。何も話してなかったのに対応してくれた臨機応変さもさることながら、シルヴィアも子供は好きなようでアイリスに笑顔を向けていた。これが彼女の本質なのだろう。本当にいい笑顔だった。


事情は後で話すことを約束してシルヴィアにアイリスを託した。アイリスもすっかり懐いた様で離れようともしなかったのでちょうど良かった。


「レックス君。どうする?稽古の件今から始める?」


「えっと、、、おねがいします!」


少し迷ったようだが、早速始めることとなった。


「ぱぱがんばれー。」


「頑張ってください。実力を見させてもらいます。」


「2人とも怪我をしないようにねー。」


上から、アイリス、シルヴィア、そしていつの間にか中庭にやってきていたミーシャだった。


レックスと話し合って実戦形式の組手をすることになった。手に持つは、この世界では一般的という訓練用の両刃の木剣だ。


「では、お願いします。」


「こちらこそ。」


すると、空気は一変する。肌には、うっすらと感じる緊迫感。明らかにレックスの纏う雰囲気が変わった。今までの佇まいが嘘のような軸のぶれないそして、隙のない間合いの取り方だった。

思わず息を吞む。全く予想のしていなかったことではないのだが、ここまでの手練の雰囲気と洗練された闘気を纏うとまでは思わなかった。握る木剣に力が入る。


それを皮切りにレックスが滑らかな動きで接近して切りかかる。受太刀した瞬間に木剣の刃を滑らせて首筋にそのまま切りかかる。


「くっ!」


無理な体勢をして避けたレックスは姿勢を崩した。もちろん、そこを見逃すはずもなく、流した身体を回転させて横腹に蹴りを入れる。かなり軽くではあるが。


地面を転がるが一回転して姿勢を立て直した。その様子から見るに闘志は消えていない。


今までの戦いの流れで一つだけわかったことがあった。それは、この世界の戦闘技術の未発達さだった。もしかしたら、まだしっかりとした人に会っていないだけなのかもしれないが、盗賊といい、ギルドでの冒険者といい、そしてレックスといい洗練された技術がないように見受けられた。


闘志や姿勢に関してはレックスはピカイチとしか言うほかない。恐らく天性の才だろうと思った。


そんなことを考えていたらレックスの雰囲気がまた変わる。


「全力で行きますっ!」


こんな少年に試されていたのかとげんなりするのと、まだ余力があると聞いて若干の高ぶる気持ちが生まれた。


レックスが一呼吸のうちに自身の間合いに入ってきた。受太刀で対応するも一太刀、一太刀が尋常じゃない膂力を持ち合わせていた。それこそ、ギルドでちょっかい出してきた冒険者なんて目じゃないほどだ。もしかしたら、しっかりと攻撃を受けていないが、あの盗賊のバロンというやつといい勝負をするかもしれない腕力に思えた。

まだ全然自身の身体の膂力を押されるほどの力ではないが、一般的に見れば驚異的だった。


とは言え、一々剣を受けるのも疲れるので剣を剣筋を下に向け、避けに徹することを決意した。


とんでもないスピードで繰り出され続ける一閃をひたすらすれすれで避ける。武道特有のすり足での滑るようななめらかな歩方での避けに、恐らくレックスには間合いがずれる不思議な感触に襲われているだろう。

その証拠にレックスの顔に驚愕の表情がわずかながら見て取れた。


レックスの一閃に筋の緩みが生じた。見過すわけもなく、下に構えていた剣を居合いの要領で全力で振りぬく。狙うは持ち手側の剣の重心の下。


武器破壊。それは、慎が生きてきた中で最も好む技の一つだった。卓越した技術がなければ為す事はできないのは言うまでもないが、剣士であれば間違いなく戦意を削ぐことが出来た。それが慎が好んだ理由だった。そう、彼はいかにして相手を制するかということが好きだった。俗に言う隠れSというやつだった。


残念に思うのは自信が手にしている武器が西洋風のショートソードということだった。刀や日本刀のように反りを持たないショートソードの様な平たい剣は、武器破壊のような繊細な一閃には向いていなく、目的も“斬る”ためではなく、力で持って叩き切る物だからだ。


振り抜いた剣先を納刀の如く緩やかな動きで腰に戻す。


静寂が訪れる。誰もが何が起こったか理解できなかった。当のレックスは、持ち手から上の無くなった剣を見て呆けている。

それもそのはずで、慎が放った一閃は常軌を脱した速度だったからだ。この場でその一閃をかろうじて捉えられた者が居た。

それはレックスではなく、シルヴィアだった。それ故にその場で一番驚愕していたのは彼女かもしれなかった。


「ぱぱっ!すごーい!」


そんな静寂も長くは続くことは無く、それを破ったのはアイリスである。


「うーん。色々と指導しがいがありそうだね。」


ここまで才能を持ちながら高めないのはもったいないの一言に尽きた。気がつけば、レックスが嬉々とした目をこちらに向けている。


「すごいっ!すごいっ!まさかこんな事できるなんて!」


まさに興奮冷めやらぬといった感じとはこのことだろう。レックスは視線は慎に釘付けである。


「まぁ、まずは基本から教えるとするかな。」


ということで、基本となる身体捌きをマスターさせるために、素振りをさせて力任せの剣術のスタイルを正すことにした。しっかりとした身体をの使い方を覚えて膂力を完全に使いこなすことだけでも出来れば、相当に彼のポテンシャルは上がることだろう。


「はいっ!師匠!」


気がつけば、いつの間にやら師匠と呼ばれていた。懐かしい呼び名に思わず破顔する。多くの教え子が居る慎からすれば、当たり前のことだったのであまり気にしなくてもいいことなのだが、それにしたって10年以上も前の話である。指導に熱が入るのもしょうがないことかもしれない。


「ふぅ。とりあえずは、こんな感じかな?これをとりあえず教えたことを意識して練習してみてくれ。一週間後にまた良く見るから。」


「わかりました。ありがとうございました!」


完全に師匠と弟子の師弟関係がそこに確立した。


指導が終わって周りを見渡すとアイリスたちが居なくなっており、日も傾きかけていた。食堂に向かうと、アイリスとシルヴィアがミーシャの手伝いをしていた。


「パパッ!お疲れ様!」


「シン、どうぞ。」


抱きつくアイリスを構いながらシルヴィアが渡してくれた濡れタオルで顔を拭く。


「あー、終わったかい!ありがとね。息子の面倒見てくれて。旦那から聞いていたからそれなりにすごいとは思ってたけどあそこまでとは思わなかったわ。」


ミーシャからその後、話を聞くと、なんとレックスも冒険者をしており、ランクもCランクということだった。Cランク言えば、受付のベスの話だと熟練の部類に入ると言っていた事を考えればレックスの強さは当たり前だった。

それよりも、ミーシャの旦那のことだった。あの紹介してくれたディンがその人だということらしい。なぜに、教えてくれなかったのか。今度会った時にしばいてやろうと決意する。


「おう。元気にしてたか?」


「あなたっ!おかえりなさい。ちょうどご飯の支度をしているとこだけどあなたも食べる?」


噂をすればなんとやらで、俺の肩口に声をかけたのは帰ってきたのであろうミーシャの旦那ことディンだった。ミーシャに促されディンも食堂にて夕飯を一緒にすることになった。


「それよりも、レックスと試合して勝ったんだって?すげーじゃねぇか。もう、親の俺でも苦戦するのに。しかも、師匠か!はははっ!これはめでてー。酒吞むぞっ!」


ディンに勧められ酒を煽ること一時間。ディンは泥酔して潰れてしまった。それをミーシャがベットまで運ぶ事となった。それによって呑み会もお開きとなり、他の宿泊客も常連の様で集まってきていたのだが散り散りに部屋に戻る運びになった。





「一緒に寝るの!パパとママも!」


とはアイリスの言である。

部屋に戻って寝ることになったのだがベットが二つしかないことに気付き、アイリスとシルヴィア、自分の構図で寝る予定だったのだが、アイリスが3人一緒に寝ると聞かなかったのだ。仕方ないので、ベットをくっつけ川の字で寝ることになった。


「おやすみー。ぱぱー。ままー。」


「おやすみ。」


「おやすみなさい。」


すぐに、すやすやとした寝息が隣のアイリスから聞こえてきた。朝からはしゃいで疲れたのだろう眠るのも早かった。


「まだ、起きていますか?」


「ん?どした?」


シルヴィアが仰向けのまま顔だけこちらに向けてきた。窓から差し込む月明かりに照らされた彼女の美貌に思わず見惚れてしまった。


「綺麗だな・・・。」


思わず、口に出てしまった。今更気にしてもしょうがないので、シルヴィアの顔をみる。どうやら意味を理解したのか。目線を下げ縮こまっている。恐らく顔を赤くしていることだろう。

しばらく言葉を待っていると、シルヴィアがまたこちらにしっかりとした目線を向けて口を開く。


「あなたは、私を妻として扱っていますが、後悔していないのですか?」


「ん?それがどうした?....すまない。もしかして、嫌だったか?」


確かに、彼女の了承を得ていなかった。一応、吞みの席で事情は話しておいたが、よくよく考えれば、出会ってその日に買われ、妻として扱われたのだ。納得のいかないこともあるだろう。


「いえ、嫌ではないですが。てっきり、アイリスの世話係兼護衛かもしくは、愛人にでもなるだろうかと思っていたのです。貴方が所帯をもっていると思っていたので。まさか、妻として扱われるとは思いませんでした。・・・って、そういうことではなく、後悔していないのかと聞いているのです。たまたま、ミーシャや周りの人は優しく接してくれましたが・・・。」


「そうか。それは良かった。だから、後悔ってどういうことだよ。奴隷ってことか?それなら気にすることはないだろ。」


「違うのです。いえ、それもあるといえばあるのですが、私がダークエルフであるということです。その意味をわかっているのですか?」


少し震える肩を見てシルヴィアが不安を抱いていることに気付く。シルヴィアがゆっくり語った。この世界でのダークエルフの待遇や世間での偏見。それは、決していい物ではなかった。娼婦としてのイメージの強いことは然ることながら、魔族で人と敵対関係にあるということ。世間でダークエルフなんて種族を妻に迎えるなんて事はありえないということ。

そう語るシルヴィアの瞳が徐々に不安の色が濃くなっていく。


ベットから立ち上がりシルヴィアの方へと寄る。シルヴィアも上半身を起こし、こっちに不安そうな瞳を向けてくる。居ても立っても居られず、そのまま抱きしめた。


「なにも心配しなくていいから。それに、こんなに可愛くて綺麗な子が妻なんだ。なんの後悔があるって言うんだ。周りの言うことなんて気にしなくていい。・・・それに、誓ってくれただろう?一生共にいるって。だから、俺も全力でシルヴィアとアイリスを守るから。不安になったら、こうやって抱きしめるから。だから、後悔してるなんて聞くなよ。悲しいだろ?信頼されてないみたいで。そう。俺は、幸せなんだから。今日一日だけでもね。」


「シン・・・。」


胸で、鼻を啜る音が聞こえる。シルヴィアが落ち着くまで抱きしめ続けた。


「ありがとう。もう大丈夫。」


「ああ。ならよかった。じゃあ、寝るか。」


元の位置に戻り寝ることとなった。


「お休み。」


「ええ、おやすみなさい。私の素敵な旦那様。」


綺麗な笑顔だった。この笑顔がいつまでも続くように命にかけても尽くそうと決心する。そして、徐々に夜のまどろみに意識を傾けていった。




次回はやっと冒険者らしいことをします。日々精進で文の方も読みやすいように勉強しつつ改善していく所存です。


見てくださっている方本当にありがとうございます。二章までの見通しは立っているので、気長に更新されるの待ってくださると有難いです。


また、感想・評価等々してくださると励みになりますのでどうぞよろしくお願いいたします。


更新予定は今日の24時です。とりあえず、寝てから書き進めます。詳しくは活動報告にて。

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