辺境迷宮都市フェンリル
ふぅ。加筆が2000文字以上、、、時間掛かった。。。休日なんてなかったんだ・・・orz
町は、見事な城壁と言うにがおこがましくなる様な囲いがあり、その前には数人の門番らしき兵隊が警備に当たっていた。
「身分証の提示をお願いします。」
業務的な言葉と共に、やはり身分証の提示を求められた。とは言われたもののそんなもの持ってなどいないのでどうしたものか。
「・・・実は、もっていないのですがどうしたらいいのでしょうか?」
正直に話すことにした。記憶喪失やら失くしたやらごまかす方法を考えたのだが、そんなことをしてもいい方向に向くとは思えなかった。
「ふむ。見た感じ魔族領の格好ではないな。一応、簡単な監査魔法を掛けさせてもらっていいか?なに、魔族との関わりがあるかどうか調べるだけだからじっとしていてくれれば構わない。一応、身柄保証金で銀貨一枚払うことになってるんだが大丈夫か?えっと、3人分で銀貨三枚だな。」
どうやら、盗賊のリーダーも含まれているらしい。そもそも、縄でグルグルの男に突っ込みを入れて欲しいところなのだが。それに、監査魔法。どうやら、自身が傷を負った攻撃も魔法で間違いないだろうと確信する。
「魔法のほうはどうぞ。いえ、お金も実は無いのですよ。それと・・・」
ここで、門番に盗賊の話をした。
「そうか。すまない、助かった。盗賊に関しては、こちらで預かって照合して賞金がかけられてないか、確認する。保証金に関してだが、ギルドに入ることをお勧めするが。身分証を作れる上に、保証金も肩代わりしてくれる。まぁ、そこまで一応監視で私がつくが、なぁに町の案内も兼ねてするよ。」
思ったよりも簡単に入れる事に驚きとこれでいいのだろうかと思いつつ、ギルドについてお願い
すると最初は驚かれたが、丁寧に説明してくれた。
この世界にはギルドと言う組織があり、大まかに商業ギルド・魔法ギルド・冒険者ギルドの三つがあるらしい。その中でも、枝分かれがあるらしいのだが。労働組合的なものかと勝手に解釈した。
この中では、冒険者ギルドが最も主流で大概はここに入るらしい。強くなれると共に、お声が掛かれば騎士にも貴族にもなれると言うのだから驚きだった。まぁ、そんなのは本当に一握りも一握りらしいのだが。
地球でも荒仕事、こっちでも荒仕事。正直勘弁願いたいと思いながら、一番性に合っている冒険者ギルドに入ることに決めた。一瞬商業ギルドでもいいかなと思うも、商売の知識なんて全く持ってないので入るのを断念した。
「そうか。まぁ妥当だろうな。では、行こうか。ふむ。監査のほうも問題ないな。」
監査魔法を掛けられたが特に何もなく通過した。中をくぐれば、広大な広さの町並みが広がっていた。
すると、兵士は振りかえった。
「ようこそ。辺境迷宮都市フェンリルへ。」
フェンリル・・・なんつう物騒な名前なんだと思った。地球では、怪物の代名詞でもある名前だった。なぜ、そんな名前なのだろうと思いつつも歩は冒険者ギルドへ向かう。アイリスも完全に目が覚めたようで降りて、左手を繋いで歩いている。
冒険者ギルドに行くまでに、アイリスのことについて聞いてみることにした。
どうやら、あまりこの世界は孤児に対して優しくないことがわかった。基本的に、両親が無くなり保護先が居ないと奴隷に落ちるらしい。
一応、教会が孤児の引き取り保護を昔はしていたらしいが、需要過多になりすぎて保護を取りやめたとの事だった。
その話を聞いていたアイリスが不安そうな顔をしたので、大丈夫だからねと頭を撫でて安心させた。すると、嬉しいようで犬耳をへにゃっとさせ、しっぽをぶんぶんと振った。
「どの世界も世知辛いねー。」
「ん?」
つい言葉が出てしまって、兵士が聞き返してきたがなんでもないと返しておいた。
自分の世界での子供の扱いを思い出す。戦時中は、それこそ孤児なんてごまんといたし、少年兵として末期では特攻のために幼い子供使っていた。それを考えるとこっちと変わらないなと思ったのだ。
この世界でも、いつか自分のできる限りのことをしてあげたいと決心し、そのための手段である冒険者ギルドへの歩を早めた。
「ここが冒険者ギルド、フェンリル支部だな。さぁ、登録が済むまでここで待ってるから行って来てきてくれ。」
「ん?中までは、ついてこないのですか?」
兵士は、虫の居所が悪いような顔をして頬をかいた。
「はははは...姉が受付をしてるからな。会うとガミガミ言われるからあまりな...。」
「あぁ、なるほど...お疲れ様です。では、行ってきます・・・あ、名前聞くの忘れていました。私は、シンです。」
「あぁ、こちらこそすまん。ここまで案内しておいて名前を名乗るのを忘れていたな。ヴァンだ。おう、行ってくれー。」
ヴァンを後に冒険者ギルドを見上げる。立派な建物で、地球で言うところの中世辺りの建物だろうか。看板には、狼のような大きな動物に跨る女性の絵が描かれていた。
扉を潜った先に待っていたのはまるでホテルのエントランスのような広めの集会所だった。
見知らぬ顔が入ってきたのを気にしているのか、置かれている椅子や併設されている簡易酒場から多くの視線が向けられる。恐らく、ここにいるのが職員を除けば全員冒険者なのだろう。体格のいい男だけだと思ったが、そんなことも無く割りと普通そうに見える人も多い。
「はっ!子供連れが来るとこじゃねぇんだよ!ひょろ男が!」
一人の体格のいい冒険者がこちらに向けて言いがかりをつけてきた。
特に構う理由なかったので、無視して受付に話しかける。
「すいません。ぼうけんsy「おい!無視してんじゃねぇーよ!」」
無視した冒険者が、肩を掴んで振り返った瞬間、予想通りといえば予想通り殴ってきた。目の前に受付の女性がいるので素直に飛ぶわけに行かないので、カウンターに手をついて微妙に軌道を変える。もちろん、アイリスが巻き込まれないようにしっかり握られていた左手も解除済みだった。
だが、予想以上の衝撃だった。受付奥の棚を破壊した上で、壁に激突し身体が止まる。正確には、何かによって受け止められたと言ったほうがいいのかもしれない。ちらりと身体の後ろに見ても何も無く今も、身体は浮いたままで宙を漂っている。なんか、新鮮な感覚だったので、力を抜いて気を失った振りを決め込んだ。
アイリスが、青ざめた顔であわあわしているのをなんとかしてあげたかったが、これ以上話が大事になるのも面倒だったのでそのままにした。
「さすがに、手は出してはいけませんよ。相手が了承の場合は構いませんが。今のは一方的です。これ以上やるとあなたを処罰しないといけないのですが、どうしますか?」
奥の部屋から出てきた女性が、冒険者に忠告した。
「ちっ!わかったよ。」
そういうと冒険者は苦虫を噛み潰したような顔をしながらギルドから出て行った。
「もう大丈夫ですよ。というよりも、いつまで茶番続けるつもりですか?」
バレバレだった。はぁとため息をつくと、急に浮遊感が無くなって地面に足がついた。そのままカウンターを飛び越えて受付前まで戻った。
とりあえず、心配そうに見上げているアイリスの頭を撫でる。うん。本当に落ち着く。
「すいません、助かりました。私は、シンです。冒険者ギルドに加入希望なのですが...」
「あぁ、私はフィリア。この支部のギルドマスターをやっている。いやなに、その必要も無かった気がするんですけどね。加入希望ね。べス。後は、任したよ。すまないね、書類整理が溜まってるので失礼するよ。」
フィリアが受付嬢のベスに言うと、奥の部屋に戻っていった。
「えっと、加入希望ですね。さっきは避けてくれてありがとうございました。ご紹介の通り、受付をやっているべスと言います。」
「ご丁寧にどうも。いえいえ、ぎりぎりでしたけどね。」
「そうなんですか?では、ギルドの説明と登録いたしますね。」
と言うと、べスからギルドの説明を受けた。
ギルドには、貢献度と本人の強さなどでランクが分けられていて、SSS・SS・S・AA・A・B・C・D・E・Fまで存在し、A以上のハンターはほとんど居ないらしい。ランク階級がなんだか軍隊みたいだなと思いつつもそのまま話を聞く。
依頼も掲示板にランクごとに張られていて、受けることの出来る依頼は、自分よりも一つ上の依頼までだということだった。これは、ランクが上がれば上がるほど重要性の高い依頼が多く失敗した場合のギルドの信用や周りへの影響を鑑みての処置と言うことで、C以上からは指名依頼なるギルドを通して特定の冒険者を指名しての依頼もあるとの事だった。
罰則に関しても然りで、比較的厳しくは無いが、故意で民間人・一般人を傷つけたり殺したり略奪したりすると盗賊などに落ちて指名手配ごとく生死問わずの懸賞金が掛けられるとの事だった。
「これぐらいですね。ご不明な点は?」
「特には・・・ありませんね。」
「では、こちらに手を置いてください。」
板みたいなものが用意されていたのだが、なんなのか不思議に思って訊ねた。
「あ、もしかして初めてでした?それは失礼しました。てっきり知っているものと思っていましたので・・・」
というと、説明してくれた。どうやら、この板の上に置くことで、その人の能力や情報を読み取ることが出来るらしい。それを冒険者用のタグに登録して登録作業は終了らしい。ちなみに、身分証やギルド内での金庫代わり、いわゆるキャッシュカードの役割も持っている優れものだった。
「へぇー。そんな機能まであるんですか。便利ですね。」
受付の人が変な顔をしたので、こないだまで森の中で過ごしてたのでずっとと答えると一瞬驚いた顔をしたものの納得してくれたようだった。
手を置き数秒待った。感覚的には指紋認証している感じだろうか。
「はい。ありがとうございます。情報漏えいを阻止するため職員は緊急時以外確認いたしませんのでご安心を。では、これからのあなたの健闘を祈ります。」
ありがとうございましたと頭を下げてギルドを後にした。
ギルドの外に出ると、ヴァンが言葉通りに待ってくれていた。
「おお、ちょうどよかった。盗賊の件で、今照合が済んで賞金が掛けられていたと連絡が来たから詰所まで一緒に来てもらって構わないか?そこで賞金を渡されると思うんだが。」
どうやら、あのリーダーらしき男は盗賊でも懸賞金が掛けられている人物だったらしい。
また門まで戻るのかと思ったが、そんなことはなくギルドからそんなに遠くない位置に詰め所があった。理由を聞けば、結構冒険者がらみのいざこざも多く、緊急時のときもギルドとの連絡がとりやすくするために離れてない位置に配置しているとのことだった。
中に入ると、まさしく戦い抜いてきた人物だと分かるような体躯を持った壮年の男が書類とにらめっこしていた。
「おう、来たか。ヴァン。ん?もしかして、そいつが?」
「ええ、そうです。彼が、盗賊を討伐したシンです。」
ヴァンがそう言うと、壮年の男は舐め回すような視線をこちらに向けてきた。
「あの...」
別に侮蔑の視線では無いのでそこまでではないが、じっと観察されるような視線も落ち着かなかった。まるで、牙を見つけ出すような視線だったから尚更だった。
「すまん、すまん!ついな。俺は、このフェンリルの防衛やらを取り仕切っているディンだ。よろしく頼む。...で、だ。早速、盗賊の話なんだが。。。」
ディンは、盗賊の件について話し始めた。
残りの盗賊を確認しにいったところ、魔物に襲われて跡形も無かったこと。アイリスの親の身元と親族、出身が確認できなかったが、亜人種と言うところからこのフェンリルの存在する国の北側に亜人種でも、狼人種の町があるとの事なのでそこではないかと言うことだった。
どうやらアイリスの耳は犬耳ではなく、狼耳だったみたいだ。全く持ってどっちでもいいことだが。
「すまんな。その娘の親族を探しきれなくて・・・この娘を引き取るのか?」
ディンは、アイリスの背までしゃがんで頭を撫でた後、慎へと目を向けた。
「ええ。そうしようと思います。父と呼んで慕ってくれてるのもありますし、、、ちょっと見過せないですし。」
「ははっ!お人よしは程ほどにしとけよ。物によっては自らの首を絞めることになるからな。」
「ご忠告痛み入ります。以後、気をつけて行動することにします。」
とは言ったものの恐らく首を突っ込んでしまうんだろうなと思う自信にげんなりするのだった。
「あぁー、そういやシン殿が連れてきた盗賊なのだが、、、かなり有名な盗賊で狡悪のバロンと呼ばれていてな。狡賢く逃げ足も早い、俺達衛兵のの裏をかくのがうまくてな...なかなかに大きい被害も出ていていたんだよ。だから本当に助かった。懸賞金もかなりの額がでているしな。数とそれなりに腕が立つんでな。冒険者でも中堅クラスを3人は派遣しないと難しいくらいにな。」
と言うとディンは頭を下げた後に、手元に袋をどさりとおく。
音から察するに、かなりの数の硬貨が入っているのは間違いなかった。
「残りの確認できた盗賊の死体から合計で、金貨780枚だ。最近支払った賞金額だと最高額だな。そもそも、この町周辺で盗賊家業をやろうとするやつはそうそういねぇからな。」
「え?そうなんですか?」
「あぁ。ここは魔族領に隣接しているのもあるが、近辺の魔物が多いのさ。特に森のやつらは異常でな。並みのやつらじゃ生きて暮らすのが難しいからな。」
「あぁ、そういうことなんですね。それで・・・ついでに硬貨の制度について聞いてもいいですか?ずっと、森の中ですごしていたので・・・」
「はっ?しらねぇのか?...まぁ、森の中で過ごしてればバロンを倒す実力もうなづける...か。」
ディンは、上手い具合に理解してくれたようで、硬貨について説明してくれた。
銅貨・銀貨・金貨・純金貨・白金貨が存在し、単位はアルで1アルで銅貨一枚分に相当するらしく、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨から純金貨、純金貨から白金貨だけは100枚で1枚換算だと言うこと。ご丁寧なことに、一食食べるのに5アル掛かると言うということまで教えてくれた。
物の相場まで分からないためなんとも言えないが、一食が大体500円~700円だと考えれば銅貨が1枚で100円に値するのではないかと思い、先ほどもらった金貨780枚を暗算で計算する。総額最低でも780万。一般の平均年収を超えていることもそうだが、それだけあのリーダーのバロンと
言う男が悪行を重ねてきたことに理解する。
「ありがとうございました。詳しく教えてくださって。」
「いいんだよ。ここまで礼儀正しいやつも冒険者じゃ珍しいからな。まぁ、なんだ。今度吞みにでもいこうや。互いに暇な時にでも。」
「ええ。そうですね。ぜひとも、当分は紹介してくださった宿にいると思うので、何かあればそこに伝言お願いします。」
ディンに深々と頭を下げる。ヴァンも仕事が残っているようで、大急ぎで門の方へと戻っていった。
詰め所を出るともう日が翳っていた。
ディンに紹介してもらった宿“湖の畔”に向かうことにした。
途中、歓楽街を通過するのだが、アイリスが傍にいるのもあって娼婦も声を掛けられずに済んだ。
「いや、本当に美人と言うかきれいな人が多いな。異世界怖い...。」
慎の思うことも最もで、見かける人の大抵が顔の整っている人が多い。そうでない人もいるは居るのだが、元の世界に比べて多いことは間違いなかった。
そうこうしていると、“湖の畔”に到着した。ディンの話によると、すこし割高なのだがサービスがちゃんとしていて信頼できる宿言うことだった。
「いらっしゃいっ!2人かい?」
中に入ると、30代半ばの赤毛の女性が迎えてくれた。アイリスを見るなり近くによって頭を撫でた。アイリスもむず痒そうに頬を赤くして足に掴まる手の力が強まった。
「かわいいねぇー。えっと、一部屋に2人だから、一泊銀貨1枚でいいよ。あ、ご飯は別だからね。それ含めると一泊3食で銀貨2枚だよ。」
一泊素泊まり1000円だと考えたらかなり格安だなと思ったが、ここよりも安いところを考えるとこの世界の相場の安さにびっくりした。
「分かりました。では、とりあえず10日分食事付でお願いします。私は、シンで。こっちは、アイリスです。ほら、お姉さんに挨拶して?アイリスー。」
「うぅ、、アイリスで...す。こんにちわ。」
おどおどと挨拶するアイリスに母性本能を刺激されたのかアイリスに抱きついてスキンシップを女性が取り始めた。
「かわいいー。早く私も娘が欲しいわー。あ、私はミーシャよ。よろしく。わかったわー。部屋は203号室ね。はい。これが鍵よ。お湯とタオルの用意はどうしますか?すぐ使われます?......旦那に頼もうかしら。」
一瞬なんのことかと思ったが、風呂に値することだと理解してお願いすることにした。そして、最後にボソッと言った一言は聞こえなかったことにした。わざわざ、夫婦の情事に口を挟むこともないだろう。
部屋に入れば思ったよりも広くてゆったりとしていた。しっかりと、ベットが二つ置かれており、元の世界の旅館のような感じがして少し懐かしくなった。
アイリスの身体を拭いてあげてから自らの身体も拭く。
いつか、温泉でも探してゆっくりつかりたいなと思った。老後は自宅を温泉の湧き出る施設に近いところに作るほどの温泉好きだった。この世界に温泉が存在するのか分からなかったが、新たなるこの世界でのやりたいことの一つに加えた。
「パパの身体、すごい傷だらけー。」
アイリスが慎の身体をぺたぺたと触る。微妙にくすぐったいのを我慢しながらアイリスの今後を考える。
「世話係を雇わないといけないかな。。。危険な場所に一緒に連れてくわけにもいけないし・・・」
「パパ、どっか行っちゃうの・・・?」
アイリスが目元を潤ませて耳も尻尾もぐったりさせた。
心配するアイリスを宥めて誤解を解くこと5分。子供の敏感さに感服しながらアイリスが一緒のベットで寝るといい、寝かしつけた。
「うん。明日からまた忙しくなりそうだな。」
アイリスが寝たことを確認して、目蓋を閉じる。
こうして夜は深けていった。
説明会ですいません。次から少しずつ物語が動き出します。次回は、奴隷制度について触れると思います。
補足:慎は今のところ技術やナノマシンの身体強化によって瞬間的な火力は異世界“ファルタール”における常人を遥かに超えていますが、まだ降り立ったばかりの彼は力に関しては中堅の冒険者と同じくらいです。なので、これからつよくなっていく・・・かも。