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アイリスとの邂逅

遅れてすいません。なかなかやはり戦闘シーンは難しい。。。。

馬車を調べている最中も、誰かいないか声をかけてみるも反応はなかった。


「確かに、人の気配したんだけどな。んー、ん?」


馬車の中の床を歩いていると、一箇所だけ違和感を感じた。正確には、感じさせないようにさせないことに違和感を感じたと言うべきか。

自身の長年の勘が何かがあると訴えている。もちろん、その勘にしたがってみたのは言うまでもない。

違和感を感じた場所に目を凝らす。すると、徐々に凝らした場所が歪んでいき大きな箱が現れた。


「どういう仕組みなんだろう。まさしくファンタジーとはこのことなのかな。」


ディアが、ファルタールと言う世界のことをファンタジーのような世界だと説明していたのを思い出す。そう考えれば、今の現象を起こしていたのも魔法のようなものでおかしくはないのだろうと結論づける。


大きな箱に手をかけて、中身を確認する。そして、慎は驚いた。中には、怯えきっている少女が入っていた。

白銀の髪の毛に、藍色の目を持った10歳に満たないと思える普通の少女だった。二箇所を除けば。


「耳?尻尾?」


少女の頭から犬の耳のようなものが、下半身に目を向ければ尻尾が服から顔を出していた。服装から見るにそれなりに裕福な生活をしてきたと伺える服装をしていた。決して華美とは言いがたいのだが。

それにしても、ディアにあらかじめ話を少し聞いていて本当によかったとほっとする。いくら老人の精神を持っていても、驚くものは驚く。心構えがなかったら、もう少し動揺していたかもしれなかった。


「大丈夫?怪我とかない?・・・何もしないから出ておいで。」


完全に怯えきっている少女に何かするのはまずいと思い、静かに出てくるのを待つ。体感的に10分ぐらい経っただろうか。全く出てくる気配がない。埒が明かないと思い、手を差し出すことを決意する。

恐怖や憎悪の目に加えて警戒の視線も加わっている。


「本当になにもしないから、ね?出ておいで?・・・っ!」


左手を出した瞬間、ガブッという音が可愛らしく聞こえるほどの勢いで少女に手の甲あたりまで噛み付かれた。

犬歯が発達しているのだろうか?どくどくと少女の口から顎を滴り、慎の血が流れ落ちる。正直に言えば、半端ではないほど痛いのだが、痛覚には強い慎だからこそ耐えられるものだと言えた。


「ウグルルルルゥゥゥゥ・・・」


少女が噛み付きながらも、唸る。

本当に、怖かったんだろうなと。ここに居て隠れながらも、音は聞こえるのだ。地獄とも間違わない惨状を聞きながらも、暗闇の中で聞き耐えていたのだ。それを想像を絶する恐怖だと言うことは考えるだけで余りある。

そう思うと、少女に向ける目が優しいものになった。あいている右手で、少女の頭を撫でる。よく頑張ったな、怖かっただろう、もう大丈夫だからと言いながら。


徐々に手に走る痛みが和らぐ。少女が噛み付くのをやめたのを確認しながら、撫でる手を一層優しさもって撫でる。

少女の顔を見れば、さっきまでの瞳が一転して、悲しみと安心で染まっていた。瞳からは、一筋涙が零れればそれは決壊したダムの様に止まることはなく、嗚咽をしながら抱きついてきた。


「よしよし・・・大丈夫だからね。」


涙やら鼻水やらでびしょびしょになった自らの洋服を見ながら、早く町に行って少女の知り合いを探さないといけないなと思う。

しばらく泣き続け、やっと落ち着いてきたのが分かったので少女の名前から聞くことにする。


「...アイリス。」


「アイリスね。私は、シンだ。アキヤマ・シン。いや、こっちだとシン・アキヤマなのかな?まぁ、シンって呼んで。」


自己紹介をしたのだがどうやら耳に入っていないようだった。アイリスは、じっと自分が噛んだ慎の左手を見ている。


「うぅっ.....ご..めんな...さぃ・・・」


アイリスは、自分のしたことを自覚したのかまたまた泣き出してしまった。


「大丈夫だから。ね?平気だから!ほらほら!」


アイリスの目の前でこぶしをグーパーと動かして見せてあげることにした。


「ほんと....?怒ってない?」


そもそも怒ってるそぶりは見せていないし、実際怒るのおの字もなかったのだが、こんな小さい子に上目遣いで許しを請われたら許さないわけがない。そもそも地球の時から、子供には心底あまあまだったのだ。


「怒ってないよ。それよりも、私の名前はシンだからねー。で、これから町に行くけど付いてくる?」


「パパもママも死んじゃったし...うぅぅぅぅ...ついてくぅ...」


どうやらと言うよりもやっぱり亡骸は両親だったようだ。聴覚がいいのか嗅覚がいいのかは分からないが、アイリスは両親の死を悟っていた。


「そうか。それじゃ行こう?アイリス。」


アイリスに手を差し出すと、今度は躊躇なく手を取った。


「うんっ!パパッ!」


「パパって...そんな歳でもないんだけどなぁ。肉体的にはだけども。」


それを聞いたアイリスがダメェー?と上目遣いにその言葉を言われれば拒否することなんて出来ないだろう。

それに加えて地球で孤児院をやっていた慎からすれば、このアイリスの行動はある種の処世術でもあり、自らに起こった惨状からの逃避と言うこともあるのは理解していた。だがら、拒否することなんて出来なかったのだ。


こうして異世界に転移して初日にして犬耳・犬尻尾を持つ少女を娘に持つ父親になってしまった慎だった。


さてと呟くとアイリスを俗に言うお姫様抱っこ状態で抱え、しっかりつかまってねと伝えてから全力疾走で町に向かうことにした。

一人で町に行くのであれば、何も問題ないのだが、アイリスという娘が出来たことで近々でお金の問題が浮上する。


「全力で町に行ったら身元と稼ぎ口を見つけないとな・・・」


早速異世界に順応を始めている自身にため息をつくものの悪い気はしてなかった。


走ること一時間ほど、前方にゆったりと進む一団が見えた。

方角といいもしやと思い、歩を止めて自分の視覚と聴覚を最大限まで拡張する。これは、地球の


頃から使っていた技術でナノマシンの補助を受けてはいるが、ひらけた所で静かなところであれば最大300m先まで聞き取ることが出来た。

幸いにも、アイリスは前方の人には気付いていないどころかよく見るとすやすやと寝ていた。寝顔を見て和んでいるのも束の間、拡張した聴覚が彼らの会話を聞き取る。


「それにしても、いい獲物だったなぁ。」


「あぁ。女の具合もなかなかだったしな。それに、馬車にあった品からして落ちぶれ貴族かもしれないな。ほんと、運がよかったな。」


会話から彼らがアイリスの両親を死へと追いやった張本人であると理解する。

略奪。盗賊。それらが存在することに嫌悪はしなかった。地球であっても盗賊まがいの略奪や強


姦が普通ではないが存在していたし、慎が経験した戦時中では当たり前で強者が弱者にするのは然るべきことだと、半ば黙認され正当化もされていた。

慎が、そういった行動したかと言われれば、否だ。


正当化されていようがなんだろうが許せないものは許せない。全うな身奇麗な人間でもないが、それだけは許せなかった。

現に今も、話を聞いてこめかみ辺りに青筋が浮かぶ。


こういったことにも慣れなければと、この世界ではきっと当たり前なのだろうと片隅で思いつつも、すやすやと安心して眠るアイリスの先刻の気持ちを考えると本当になお一層許せなくなる自分が居ることに気がつく。さっきまで、死の恐怖に追い詰められていたんだ。緊張の糸が緩んで眠ってしまったのだろう。ちょっとやそっとじゃ起きないだろう。


つくづく寝ていてくれてよかったと。こんな顔を見られなくてよかったと心のそこから思った。


そこからの慎の行動は、早かった。緩やかな加速でアイリスに負担を全くかけずに、盗賊へと追いつく。


「おい、お前ら。さっきそこの馬車を襲ったやつらか?」


自分でもびっくりするほど冷たい声が出た。


「あ?お前は、誰だ?・・・ふむ。俺たちにどうかしようってのか?はっはっはっはっはっ!武器ももたねぇでチビを抱えてるやつが何ができる。なぁ?」


振り向いた盗賊のリーダーらしき男が慎の目つきで敵だと認識する。そして、弱者がなにを言っていると嘲笑の目で言った後、仲間に賛同求める。

仲間の盗賊も、笑いで同意を返す。


「まぁ、そこの子供を置いてけば命は見逃してやる。そいつも、なかなかの上玉になりそうだな。」


じゅるりという音が聞こえそうな舌なめずりをした。


「ふむ。更生の余地はないな。生かして償わせたいのだが、力量も分からないしな・・・まぁやるだけやるか。」


といいつつも、アイリスを抱きつつの戦闘は、それだけでかなりのハンデだった。実際に使えるのは足のみだ。

かといってアイリスを置いての戦闘は論外で人質にされるだけではなく、さっき


からこちら伺っている殺気のようなものが気になっていたのだ。殺気をここまで極限的にすり減らし狙う力量から相当頭がよく力の持った獣だろうとあたりを付ける。正直、そっちの方が警戒度は高かった。


慎の一言で、敵意をむき出しにして盗賊たちは襲い掛かる。計9人の盗賊たち。



盗賊達の剣筋の掻い潜る様に、そして舞うように避けつつそれぞれに、ある者はローキックで両足ともに粉砕し、またある者はハイキックで顎を粉砕した。掛かった時間わずか数秒。やられた


盗賊たちは何をされたか理解すらしていないだろう。今も、自分が何をされたのか分からない者やその瞬間見た後にやられた者は、慎を恐怖の目で見ている。


正直、慎は拍子抜けしていた。盗賊に身を堕とす者たちだ。全うな武芸を持つ者でないのは分かっていたのもあって大した強さは期待などはしていなかったが、自身の力に任せただけの粗雑とすら呼んでいいのか分からない斬るのではなく押しつぶす剣筋。美しくない、つまらないと一瞥と共に、舌打ちした。


「なんなんだ、お前・・・くそっ!!てめぇらも、つかえねぇな!!」


リーダーの男に蹴りを当ててあっけなく終わる・・・予定だった。

リーダーに蹴りをわき腹に入れると、ほぼ同時に背中にとてつもない熱量と共に衝撃を感じる。


激痛を感じるも、見事と言うしかない受身でもってアイリスへの衝撃は最小限で留められた。少し身じろぎをして居心地悪そうにしたがまだすやすやと眠っていたので安心する。

それと同時に、一呼吸で距離を縮め2射目を放たれる前に側頭部に蹴りを入れて意識を刈り取った。



「くそがっ!」


リーダーの男は、わき腹を押さえながら悪態を吐くが、手負いの獣如く睨み付けて来ていた。

そして、背中に背負っていたグレートソードの様な2mを超えるような大剣を抜き取り、両手で構えた。


正直、驚いていた。まさか、初手で放った蹴りを食らって立っている者がいるとは思わなかった。確かに、手加減はした。それは認めるが肋骨を砕く勢いの蹴りは放ったつもりでいたのだ。それを立っていられるような、普通に戦闘が出来るようなはずはないのだが。これが、魔素の吸収で起こる身体強化による膂力なのだろうか。


さすがに、刃物を持った相手と交えるのにアイリスを抱えたままでは厳しいと判断して苦渋の選択であるが地面に降ろす。


ゆっくりと男へと歩を進める。それに合わせるかのように男は先ほどとは打って変わった速度で迫ってきた。

右手に顕現させるは、鞘拵えの日本刀。銘は“雪月花”。長い生涯の中を支えてくれた武器の一つだった。

しっくりした感覚を嬉しく思いつつも、男は袈裟懸けに剣を振り下ろした。合わせるように鞘から居合いでもって刀を振りぬく。男の持つ分厚いグレートソードが布を切られるが如く滑らかに切断される。


呆気にとられる男を他所に、刀を消失させ右足の振りぬきでもって男の左腕ごとわき腹を粉砕した。



「ふぅ...さすがに痛いな。修行が足りないな。完全に油断してた...」


ヒリヒリを超えた痛みを放っている背中を感じながら、少し反省しなければいけなかった。距離が離れていたことに完全に油断していた。飛び道具を持っていないことで攻撃手段はないと思っていた。それが無ければもっと楽にリーダーの男も倒せていたことだろう。




そこで、改めてここが自分育った世界ではないことを実感する。なぜなら、自分に放たれたのは火の玉のようなものだったからだ。


「魔法だよな...」


断定は出来なかった。だがそれでも、未知の攻撃方法であることは間違いなかった。ナノマシンのお陰で治りは早いが、それでも一歩間違えれば大怪我をしていたかもしれないことを考えれば油断できない材料だった。

焼け爛れた背中も割りとすぐに回復したが、その代わりに、焼け焦げた上着を盗賊たちの物品を漁って良さげなTシャツっぽいものを拝借した。


そして、盗賊たちが持っていた縄で全員縛り、リーダーのみを背に背負い町に目指すことにした。さすがに、11人も素手で引き回すのはごめんだったからだ。

途中で、アイリスが起きるものの悪いやつがいるからお仕置きしたで通したら、意外とあっさり信じた上で、パパは強いんだね。まで言われ気分的に和んでしまった。


そこからはリーダーの男に案内させたこともあり、ほとんど時間経たずに町に到着することが出来た。








次回は夜中3時になります。今から大急ぎで修正に入ります。そこまで修正点はないと思うので予定通りいけると思います!

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