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【短編】エレジークリニック

エレジー先生

作者: れみ

 患者のSさんは、何をしてもうまくいかないのだという。


 良かれと思ってしたことが全て裏目に出て、空回りばかりで、相手から一方的にやり込められてしまう。焦れば焦るほど失敗が続き、負のスパイラルにはまり込んでいく。すっかり自信をなくしてしまった。好きなことをしているはずなのに、楽しくない。後悔や不安で頭がいっぱいになり、夜も眠れない。自分は病気なんじゃないか。


「それは病気じゃないね。能力不足だよ」


 エレジー先生は言った。


「ひどい。私はこんなに悩んで苦しんでいるのに」


 Sさんはくまのできた目を見開いて言った。

 エレジー先生はタブレットの画面を小気味よく弾き、ふんふんとうなずいた。


「孤独タウンから左に行くと、小さい民家のような施設がある。そこでモンスターを量産できるから、今日から厳選作業にあたりなさい。妥協してはいけません。できるだけ能力の高い個体を生み出すこと」

「ちょっと、何の話ですか」


 Sさんは椅子から立ち上がった。顔を真っ赤にし、両手を震わせている。

 エレジー先生は驚いて、タブレットの電源を切って処方薬事典の隣に置いた。


「ニクマン・エックスだけど、違った?」

「ふざけないでください! そんなゲームの話、私はしてません!」


 Sさんは勢いよく向きを変え、診療室を出ていこうとした。

 エレジー先生は慌ててSさんを呼び止めた。白衣をふわりと揺らし、丁重に頭を下げる。


「すみませんでした。てっきりニクマン・エックスの話だとばかり思って……本当に失礼しました」

「あ、いえ、そんな」


 Sさんは大声を出したことが恥ずかしくなったようで、静かに椅子へ戻った。

 エレジー先生はボールペンとカルテを用意し、Sさんに向き直る。


「改めてお聞きしましょう。何の話ですか?」

「はい。ニクマン・シグマトパーズ。最新作のほうです」

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― 新着の感想 ―
[一言] Sさん意外と忙しいじゃないか、と笑ってしまいました。 ゲームの話と思って読み直すとなんと!!です(笑) 2人でゲーム談義、いいですね~(ずれてるずれてる) エレジー先生は名医ですね^^
[一言] 厳選作業は、なかなかしんどいですよね。自分も何回か経験したことあるので、早く処方薬が欲しいです(笑)
[一言] 結局ゲームかいッ!w
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