二十年前
「どこまでって言われても、」
「ステインと言う男は、弦に妻を殺されたんだ。」
ヒロは腕を組む。
「えっ?」
「ステインは弦を恨んだ。パラディンを抜けてアンチに入ろうともした。アンチの方が弦との遭遇率が高いからな。」
「ウソだろ。」
マサキは小さく言う。
「マリン、席を外してくれ。」
「え、、わかったわ。」
そして、ヒロは続ける。
「弦のせいで、俺達の組織は二つに別れた。二十年前の話だ。俺はまだ五歳だった。」
「二十年前。ちょうど俺が産まれた時か。」
マサキは言う。
「俺達の組織はアダムと言う男が作り上げた。アダムは半年足らずでノーベラーを約1500人、全世界から集めた。俺達は当時アメリカにいた。これだけのノーベラーがいればアメリカを制圧する事も可能だった。だがアダムの目的はそんな事じゃない、銃を所持してもいいアメリカだからこそアダムは話を持ちかけた。弦は当時政治家で弦を通し話はいい方向に進んでいた。弦をお父さんの様にしたっていたのがマリンの弟だ、俺と同い年だった。そして話し合いは終盤に入り俺達ノーベラーはある場所に集められた。それが間違いだった。そこにはまだ未完成だったがスパイラル爆弾が隠してあった。未完成でも威力は凄かった。弦は俺達を裏切りノーベラー、1000人くらいは死んだ。弦のそばにはマリンの弟の姿は無かった、恐らく弦に消されたのであろう。マリンは二十年たった今でも生きていると信じている。」
「そんな事が、でもそんなに多くの人が亡くなったら表沙汰にもなるんじゃ。」
「そこなんだよ。スパイラル爆弾はあらゆる物を完全に消し去る爆弾なんだ。だから政府は被害者は0という様に表には発表した。」
ヒロは一呼吸おき続ける。
「アダムは残りのノーベラーを生かすため1人で戦った。俺達は日本に逃げ込んだ。生き残ったノーベラーは皆政府を恨み戦う事にした。しかし俺にはそんな事耐えられなかった。今、パラディンの人数は全世界で100人ちょっと当時は50人くらいだった。アンチは今、700人くらいだと聞いている。」
「そのアダムって人は今は、」
「アダムはあの時死んだ。命をかけて俺達を助けてくれたんだ。俺達はアダムの意思を継ぐ。分かり合える日が来るはずだから。」
「よし!ついて来い。」
ウィンはそう言ってマサキを連れて風呂場に向かう。
「着替えは俺のを持ってくるよ。」
「さっきの話は本当なんですか?」
「ああ、ヒロがつけているお面あるだろ?あれはなアダムがつけてた物なんだ。アダムの素顔を見た事があるのはヒロだけなんだ。あいつにとってアダムという男の存在は大きかったんだ。まあ、ここは安全だから安心しな。」
ウィンはそう言って出て行く。