衝撃
秋雨です
遅くなりました
今回は今崎理子視点でいきます
午前中の授業が終わった私は、お弁当を持って大地さんのクラスに行った。
友達はあんな奴のどこがいいんだって言うけど、私はどうしてそんなことを言うのかさっぱりわからない。
むしろどうしてそう思うのか聞きたい。
大地さん以上にかっこよくてギャップがある人は絶対にいないのに!
でも、私だけが知ってるって思うとちょっと、ううん、かなり嬉しかったりする。
そんなことを考えてたらテンションが上がって、上機嫌で大地さんのクラスの扉を開けた。
「大地さーん!」
でも、いつもの席に大地さんはいなくて。
どうやら立松先輩と屋上に行ったらしい。
え、どうするかって?もちろん行きますよ!
教えてくれた先輩にお礼を言って、屋上に続く階段を駆け上がった。
今日は、どんな話をしようか、と胸を躍らせて。
扉の前に立って、軽くはずんでいる息を整える。
――――――……よし。
ぐっ、とドアノブを握った。
「ギャアアアアア―――ッ!!?」
その瞬間、扉の向こうから悲鳴が聞こえた。
この声って、大地さん!?
ハッと息をのんですぐさま飛び出そうとした。
「め、めめめ、飯に! 飯に、むむむ……!!」
そして次に聞こえたこの声に安堵した。
よかった、虫がいただけか。
「知らねぇよ!!あたしの飯に…ム、虫が!!」
「あ。空、一人称“あたし”に戻ってるよ」
え、“空”……?“あたし”……?
何、言ってるの?
そこにいるのは、大地さんと立松先輩だけでしょう?
声だって二人分しか聞こえないもの。
「想像したら気持ち悪くなって来たじゃねぇか!大地!お前のせいだ!お前が屋上で弁当とか言い出したからだ!そのせいであたしはッ!あたしはなぁ…!!」
大地はあなた、でしょう……?
違うの………?
…………もう、わからないよ…。
あの後私は、屋上には入らずに教室に戻った。
屋上の話を思い出して、悶々として、気がついたら午後の授業は終わっていた。
「はあ……」
帰り道でもそのことが頭から離れない。
考えないようにするのなんて、無理だった。
「…………大地、さん」
「よう、そこのお譲ちゃんよぉ」
俯いて歩いていたら、制服を着た男4人に道をふさがれた。
「……何か、用ですか」
「単刀直入に言うぜ。おまえさぁ、原田大地の女だろ?」
男の口から出てきた言葉はあまりにも突拍子がなくて。
頭の中でその言葉を繰り返し、理解した瞬間、顔に熱が集まった。
「なっ、ななななななっ、そ、んな!“大地さんの女”って……て、照れますっ!」
言った瞬間、気付いた。
ああ、私、大地さんのことこんなに好きだったんだ、って。
もう、大地さんにどんな秘密があってもいいや。
どんな大地さんでも、私は好きでいられる。
「やっぱりな。お譲ちゃんに恨みはねぇが、原田には恨みがあるんだよ」
「という訳だ。人質として、一緒に来てくれねぇか?」
「行くわけないでしょう。そこ、退いてください」
自ら足手まといになるわけないじゃない。
きっぱりと言い放った。
「じゃあ、仕方ないよなぁ」
ガシッと腕を掴まれた。
「ちょ、っと!離して!!」
「手荒な真似はしたくなかったんだけどな」
なんとか逃げだそうともがいていたら、頭に衝撃が走った。
「っあ…………」
――――――――助けて、大地、さ………。
次は最終回で、緋絽さんです
秋雨の出番はここで終わりました
ありがとうございました