起点
長らくお待たせしました、秋雨です
今日は学校が休みだから久々に家でだらだら過ごそうと思う。
――――えー、つまんねーよー。外行こーぜ、外。
――――嫌だ。今日は家でゆっくりする。はい決定!
――――ブーブー!!
ブーイングする空を無視してベッドに転がる。
空がうるさくするのも慣れたよなー、俺。
……そういえば、空っていつから俺の中にいるんだっけ…?
あー、思い出せそうで思い出せない……。
まあいいや、寝よう。
相当疲れがたまってたみたいで、俺はすぐに眠りについた。
俺が、小学四年生のころ。
このころから正義感の強かった俺は、帰り道にある公園で捨て猫を見つけた。
どうしても通り過ぎることができなくて、毎日公園に寄っては猫に餌をあげていた。
その日もいつも通り猫に餌をあげようと公園によると、小学六年の男子三人が輪を作ってあの捨て猫を蹴っていた。
「やめろっ!!」
弱った猫の姿を見た俺は、後先考えずに飛び込んだ。
「あ?なんだ、こいつ」
「しらね」
男子の足が止まった。
今だ!
猫を抱き抱えて駆けた。
「あっ、逃げたぞ!」
「待て!!」
男子も追いかけてくる。
もうちょっと、もうちょっとで公園から出れる……っ!
そう思った矢先、俺は石に躓いてこけた。
「うわっ……!」
こけた拍子に猫が腕から飛び出し、そのまま逃げて行った。
「ちっ、逃げちまったじゃねーか」
「どうしてくれんだよ!」
「責任、取ってもらおうか?」
そこからは蹴る殴るのオンパレード。
喧嘩が弱い俺は、体を丸めて耐えるしかなかった。
そろそろ意識が遠のき始めたころ、声が聞こえた。
――――助けてやろうか?
耳から聞こえた、というより、脳に直接響いている感じがする。
――――だれ……?
――――オレ?オレは空だ。
――――空………。
――――って、そんなことはどうでもいいんだよ。助けてほしいか?
――――助けてくれるのか…………?
――――もっちろん!オレにまかせな!!
その言葉に、凄く安心した。
――――じゃあ、オレの言うとおりにしてくれ。
――――わかった。
空の指示に従い、起き上がる。
「なんだ?」
「まだ起き上がれたのか、こいつ」
「しぶてぇな」
満身創痍だった俺が起き上がったから、男子が警戒している。
――――そいつらの中の誰でもいい。とにかく目線を合わせろ。
目線………。
一番身長が近い男子に目を向ける。
「な、なんだよ」
黙って、じっと見続ける。
――――10
カウントダウンが始まった。
「何だって言ってんだよ!!」
――――8……7……
「なんだ、こいつ。気味悪ぃ」
周りの声も気にしない。
――――5……4……
「なんとか言えよ!!」
しびれを切らした男子が拳を振り上げる。
――――2……1……
「ナイスタイミング」
拳を振りかぶっていた男子が吹き飛んだ。
「あー、いてー。ったく、さんざんやりやがって……」
ぐるんぐるんと肩を回す。
「覚悟はできてんだろうなぁ?」
このとき、俺の中に“空”という人格が誕生した。
――――……い、おい、大地ー。そろそろ起きろよー。
「ん………」
頭に響く空の声で目が覚めた。
あー、ずいぶん懐かしい夢を見たなー。
――――お前寝すぎ。何時間寝る気だよ。
――――そんなに寝てないだろ。
――――いーや、二時間は長いほうだね。
ああ、そんなに寝てたのか。
――――………なあ、空。
――――なんだ?
――――これからもよろしくな。
どうして急にそんなことを言ったのかわからないけど、今言いたい気分だった。
――――……おうっ!
空の、照れた笑みが見えた気がした。
――――ところで大地、カナ呼ばないか?
――――入れ替わる気満々だろ。
書くのに苦労しました……
次は緋絽さん!