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30 minutes  作者: 緋絽
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運命


どうも、夕です。



最近教室内がそわそわしている。

というのも。

「じゃーこれから数学のテスト返すぞー」

「ぎゃああああぁぁぁ!」

1学期期末のテストが終わったので続々とテスト返却されているのです。

先生が黒板に大きく数字を書く。

「学年平均が、47.5。クラス平均は……」

ごくりと息を飲む皆さん。

なぜでしょう。

「…58.4、だな」

悲鳴があがった。

だから、なぜなんでしょう。

―――お前、何点だよ。

―――わ、寝てたんじゃなかったんだ。

―――オレだって年中寝てすごしてるわけじゃねぇぞ!…で!何点だ?

―――まだ俺の番きてないって。

「次ー、原田大地ー」

あ、きた。

席を立ってテストを受け取りに行く。

もちろん目を合わせないようにうつむき気味で。

「原田、もっと堂々と受けとれ」

いろいろ誤解されるけども、しょうがない。

「また学年トップだったぞ」

「…どうも」

―――まじかよ!?

点数を見る。98点。

もう一度点数を見る。やはり98点。

―――98点!?一問逃しただけかよ!!

頭の中で空の声がやかましく響く。

俺はそれを無視しながら自分の席に戻った。

「原田!またお前のせいでクラス平均がとんでもないことになってるし!俺、赤点決定じゃん…!」

後ろの席の人に涙目でそう言われた。

「はあ…すみません」

俺は今それどころじゃないんです。

今回はいけるはずだった。

返却されたばかりのテストをじっくり見る。

基礎問題の欄に×がひとつ。

―――でっけぇ溜め息ついてんじゃねぇよ。98だぜ?

―――中間もひとつ間違えてたんだ。あー…こんな簡単なところで…。

―――……お前、なんで嫌われねぇのか不思議だよ。





どんよりしたままその数学の授業は終わった。

次は……あ、昼休みか。

―――飯だ飯だー!

俺が食事をすると空も食べた気分になるらしい。逆も同じ。

「大地」

「あ、奏」

コンビニの袋を提げた奏が、近くの椅子を引っ張ってやって来た。

「テスト」

「……………」

「またトップだってね」

そして机にひろげたコンビニおにぎりを食べる、のかと思いきや、携帯を出して弄り始めた。

「それ、また変な…その…」

―――この機械オタクが!

「違うよ、これはただの携帯。でも、これから今崎さん専用の発信器でも付けようかと」

「やめてよ?!そんな恐ろしい…」

その時、教室内が少しざわついた。

誰だ?という声と、俺の席まで一直線に近づいてくる足音。

嫌な予感しかしなかった。

―――発信器要らなかったな。

空がたぶんニヤニヤしながら言った。

「大地さん!一緒にお昼食べましょう!」

「………は、はい…」

いつもいきおいに負けてしまう俺。ヘタレの自覚はあります。はい。

出席番号ばれた日から、今崎さんが度々この教室の外でうろうろしているのを見かけていた。

そろそろ来ると思ってたんですよね。

今崎さんは遠慮なしといったふうに椅子を持ってきた。

「あの…今崎さんって1年生でしたよね?」

「はい。そうですよ?」

「上の学年の階に来ることに抵抗は…」

「ありませんよ?大地さんに会いたいですから」

そうですか…。

「まあいいじゃん。大地。よかったら目見てあげるけどね」

今崎さんが来たとたん黙っていた奏がぽつりと言った。

「目?」

―――お!出番かっ!

首を傾げてぽかんと口をあけた今崎さんをごまかすのは大変でした。

―――くそぉ…。思わせ振りなんだよクソ大地!

空の機嫌も悪くなったし。

「あれ、テスト返却だったんですか」

まだ消されてなかった平均点に今崎さんが気づいた。

「クラス平均高いですね。私のクラスは30点代でしたよ」

「大地がひとりで吊り上げてんだよ」

おにぎりを頬張りながら奏がこっちをちらっと見た。

奏もそこそこ点はあるでしょう!

「へえ、だったら唯高じゃなくても、他の学校に行けたんじゃないですか?こんなおバカ高校じゃなくても」

あの、おバカ高校は言い過ぎじゃないでしょうか…。

周りからの視線が突き刺さってきます。

「大地はね。入試当日に熱出して、入試受けられなくて。それで二次募集してたこの高校に来たんだよ」

「…奏」

「そうだったんですか!本当はどこに行くはずだったんですか」

人の暗黒歴史(かこ)にそんなに食いつくか!

目を煌めかせた今崎さん。

これは話さないと後からしつこく聞いてきそうだ。

「――本当は、宝岳学園を専願で受けるつもりだったんですよ…。そうしたら熱で行けなくて。公立の入試は間に合わず、定員数の空いてたこの高校に…」

あの時はだいぶ落ち込んだな。

前の日に最終確認で夜中過ぎまで勉強した自分をどれほど呪ったか。

「……そんなかんじです」

「宝岳学園って小学校から高校までどーんと続けて入れるあそこですか!?すごいです!!」

本当に驚いたようで大きな音を立てて立ち上がる。

また視線が突き刺さってます。

しばらく、すごいすごいと騒いでいた今崎さんはやがて落ち着いたらしくもう一度椅子に座ってくれた。

「宝岳学園に入れなかったのは残念でしたけど」

グサッと何かが突き刺さる。

確かに思ったことをすぐ言葉に出しちゃうみたいですね…。

「おかげで私は大地さんに会えました!」

「おかけで…」

「きっと私と大地さんは唯高で会う運命だったんですね」

「………………あはは」




―――こうなる運命だったんだな。

―――空までそんなこと言うか!





秋雨さん、よろしくお願いします。

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