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30 minutes  作者: 緋絽
1/11

表裏

リレー小説隊、新作です!

初回は緋絽です!

「俺達と遊ぼーよー」

「こ、困ります」

「えー、なんで、いいじゃん」

唯野(ただの)高校の裏門では、体格のいいいわゆる不良と呼ばれる男が3人、1人の女の子に絡んでいた。俗に言うナンパである。

俺はそれを見てそいつらに近づいた。

「君達」

声をかける。

「やめなさい。どう見たって嫌がってるでしょう」

不良達の目がこちらに向く。

頭の中の声が呆れたように溜息を吐いた。

見逃せるか、バカ。

「あぁ!?誰だてめぇ!」

原田(はらだ) 大地(だいち)です」

「原田 大地ぃ?知らねぇな」

ゲラゲラと下品な笑い声が響く。

「それにしても、女の子に無理を強いるなんて…。男の風上にも置けませんねー」

冷ややかな声を意識して煽る。

「んだと!やんのかコラ!」

俺は眼鏡を押さえた。

「そこの子、行ってください」

「は、はい。…ありがとう」

笑って女の子を見送る。女の子が行ったのを確認してから俺は不良に向き直った。

「───上等じゃないですか。どこからでもかかってきなさい」

頭の中の声がやめとけと笑う。

数秒後、俺はボッコボコにされていた。

「なんだこいつ!よえー!」

「わぁっ」

背を蹴られる。

い、痛い。でも、あれを見捨てるわけにはいかなかったし。

───大地、お前そんな正義に従って生きてたらいつか身を滅ぼすぞ。

───うるさいよ、バカ。

でも、こうなったら。

這いつくばっていた状態から体を起こす。

蹴ってきた人の方を向いてその人の腕を掴んだ。

───何、何何何!やんの!?

嬉しそうな声に噛みつくように言い返す。

───仕方ないだろ!調子にのるなよ!

「離せ!」

手を振り払われる。

咳払いをして相手に笑いかけた。

「すみませんけど俺の目を10秒見てもらえますか」

「は?」

一斉に不良達がポカンとする。

そりゃそうでしょうねぇ。俺でも突然こんなこと言われたらそうなりますもん。

「はいいーち」

そして律儀に見てくれる。

───来た来た来た!

「……6、7、8…」

頭の中であいつが狂喜している声が聞こえて、意識がどんどん沈んでいった。

「…9、10」



「…お、おい?10秒経ったぞ?」

不良達がオレ(・・)の顔を覗き込む。

オレは手を握ったり開いたりして体の感覚をつかんだ。そして、ようやく実感する。

「ひゃっはぁ!やっと表に出れたぜ!」

唐突にそう叫んだオレに不良達がビクッとなる。

でもオレはそこに頓着しない。

だって、今は最高に気分がいい。

例えリミットは30分でも表に出られるのは最高だ。

「よっしゃあ、どっか行こう!おいそこのデカブツ共」

オレは不良達に向かって追い払うような仕草をする。

「ご苦労だった、行ってよし」

「はぁっ!?」

満足気に歩き出したオレの肩を1人が掴んだ。

「おいコラ原田 大地!行かせるわけねぇだろ、てめぇふざけてんのか…っ」

振り返り様に顔面に拳を叩き込む。

「うぁっ…!」

眼鏡を取って放り投げる。

「ふざけてんのはてめぇだろーがデカブツ。誰がオレの肩触っていいって言ったよ」

───ちょっ、ちょっとっ!眼鏡!

───うっせぇヘタレ、黙ってろ!

「オレの行こうとする道を阻むやつは殺す。それからっ」

オレが1人伸したのを見て逆上した他の奴らが襲いかかってきた。

それを全部いなして反撃する。

その後数分経たずして全員が倒れた。

オレは前髪をかき上げ、握った拳の親指を立て下に向けた。

「オレは原田 大地じゃねぇ、原田 (そら)だ!二度と間違えんな!」

ダウンしている不良達の間をまさぐって眼鏡を探す。

「お、あったあった」

───割れてないだろうね!?

「うるせーな、細けーこと気にしてんじゃねーよ」

───細かくないだろ!

チリッと頬が痛む。

「いてっ。クソ大地、思いっきり殴られやがって」

───しょ、しょうがないだろ!俺喧嘩なんかしたことないんだから!

───なら受けて立つなよヘタレ。やり返そうともしねーで、何生意気言ってんだ。

悔しそうに黙り込んだ大地にフンと鼻を鳴らして勝ち誇る。

その時───。

「またやったの?空」

「悪いか、機械オタク」

「オタクじゃないから、趣味だから」

真顔のまま静かにキレているカナ───立松(たてまつ) (かなで)を見る。

「だって大地が代わってくれって言うからさー」

───言ってないっ!

「今大地、絶対言ってないって言ったでしょ」

「ご名答、よくわかったな」

「大地ならそう言うよ」

クククッと喉を震わせてカナに笑って見せた。

カナはオレと大地の幼なじみみたいなものだ。気が付いたら一つの体に2つの人格(・・・・・)があったオレ達を初めからすんなりと受け入れていた。

だからか、オレと大地が入れ替わった瞬間ってのがわかるらしい。

なんでか聞いたら、雰囲気がまるで違うじゃん何言ってんのと真顔で返された。

「ま、いーけど。オレ、あと20分しかないから遊びに行きたいんだけど。カナも来いよ」

ずっと表に出ていられる大地と違ってオレは30分がリミットだ。それが過ぎたら強制的に表裏が入れ代わる。

「いーよ。暴れないでね、空」

「絡まれなかったらな」

───絡まれても避けてよ!?

───知るかバカ。

フンと笑って歩き出し───声を掛けられた。

「あのっ!!」

その声にカナと一緒に振り向く。

さっき伸した不良達に絡まれていた女子がそこに立っていた。

「あれ?あんたまだいたの」

頭の中の声も不思議そうにしている。

そう言ってる間に女子がズンズン近づいてきた。

「何?なんか用?」

頭をボリボリ掻いて女子を見た。

女子が緊張を紛らわすように深呼吸を数回繰り返す。

オレは首を傾げた。

「あ、あああああのっ」

「だから、何」

───なんだろう?

───さぁな。

「た、助けていただいてっ、ありがとうございました!」

「あぁ、いや別に…」

助けたつもりはないんだけど、オレは。

「すっごくかっこよかったです!」

───ん!?

───かっこよかった!?

「え?」

「すっ、好きになりました!」

くっとカナの目が開く。

「付き合ってください!」

恐らくものすっごく緊張しているであろう女子に、オレはへらっと笑いかけた。

「悪いけど、無理」

「え!」

女子が 泣きそうになる。



「だってオレ、女だし」



次は夕さん!

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