第一話:17歳〜再会の足音〜
「―ねぇ、ミサの初恋っていつ?」
友達は尋ねる。急に話し掛けられた私は、はっとなりながらも、微かに甘く苦い記憶に身を任せる。
私の初恋はそう、あの頃かもしれない―。
キーンコーンカーンコーン…
今日もまた、一日が始まる。いつもと変わらない、単調な一日。
女子校に入学してから、もう二年。受験生だというのに、まともに両思いという経験さえもせずに17年経ってしまった。嗚呼おそろしきかな、年令イコール彼氏いない歴。
高校に入学してからは、教師以外の異性とまともに会話もしない。
そんな環境で生活していたから、特別親しいわけでもない友人が昨日の帰り道に尋ねたことばと、土曜日のイベントの間に不思議な運命を感じたのだった。
その日は一日中うわの空だった。帰り道、タカミが私に尋ねた。
「ミサ、土曜日何着てくか決めた?私一人で制服着るのやだからさ、一緒に着てこうよ」「そうだね、どうせ課外の後だし」
私はホッとした。自分のセンスに自身のなかった私は、私服を着たくなかったからだ。
「あぁー、あの人も来るんだぁ、どうしよう」
私はタカミのことばにドキ、とする。
「…あの人って?」
「あの人だよ、ほら、…S君」
…あぁ、そっちか。何考えてるんだろ、私。
この勘違いを悟られないようにタカミを冷やかす。「なにぃ?タカミちゃん久しぶりにS君に会うからドキドキしてるの?」
それは私のほうだ。別になにが起こるわけでもないってわかってるつもりなのに。
自分勝手な奇蹟を期待してる。顔が可愛いわけではなかったが、なんだかんだいって素直で愛敬があるタカミに対して、私はどことなく宙に浮いている様で、あまり自分の話はしなかった。
そんな私の、自分だって気付いていなかったのかもしれない気持ちにタカミが気付くはずもない。ましてやあの人なんて。