死のグラフィック・イコライザー――TOD
.
…
ああ
美しい歌
死のドラムンビートが
忍びよってくる
見えない不透明の壁になって迫り
全身を突き抜けてゆく
何拍子かも定かではないが
それが死だとわかる
――
生まれてはじめて
聞いた曲のタイトルなんて
覚えていない
だけど――
それで間違いないんだ
――……
超高音を放つ
鋭利なツィーターに刺され
ミッドレンジの
あの憧れた
エーゲ海に似通った
寄せる波
陶酔
…
でも
それにも増して
思い出すのはあのウーハー
初めて地球の写真を眺めた時のよう
大きな丸いスピーカーに
殴りつけられて
和太鼓のなか
そこに
閉じ込められ
生と死を浴びて
居場所もわからなかった
勉強するはずの場所だった学習机が
もっとも居心地よい場所で
桃源郷だった
でも
…
そこには
とても美しい歌
死のドラムンビートがあった
きっと誰もが
奇妙で奇怪な詩歌に出会い
そこに秘められた
あの波長に
捉えられたなら
もう逃げるなんてこと
できやしない
…
君が
希むなら
そう望むのなら
今すぐ
見せてあげる
…
そう今すぐ
見えない壁に書かれた
符丁に
アクセスして
グラフィックイ・コライザーの
スイッチを
ONにすれば
いいだけ
さあ
やってみて
…
.
どうして
恐れたりしたんだ
慄きすぎなんだよ
見えない死を恐れ
僕はあなたの心に
見せてあげたくて
美しいなんて語彙
詩における禁句を
二回も使ったのに
残念で仕方がない
スイッチOFFでも
見えたと祈りたい
こうして説明書を
読むあなたを僕は
責めたりはしない
飲料パックにある
成分表みたいだね
だけどもあなたは
気づいたはずだね
初めて見えない音
その音が棒になり
上下に伸びて縮み
また伸び縮みする
あの視覚の体験が
音ではないのだと
きっと思いだした
思いだしたのだと
祈りたい気持ちだ
見えないなにかが
見えてしまっても
もうきっと大丈夫
大丈夫、大丈夫さ
朝、目が醒めても
エトナ山の底から
響いてくる蠢きも
電子レンジの箱が
放ってる超音波も
決闘状も君はもう
恐ろしくないかな
◉連絡先:担当者
TOD: Him u.Hölle




