1/6
プロローグ
「確か、このあたりだったはず」
横なぐりの風に吹かれながら岸を歩く。
ここ数日の激しい嵐で、海はすっかり荒れていた。
「あ、殿下……あそこ!」
私が指をさした先に、何かがうずくまっているような影があった。
かけ寄ると、それは女性だった。
衰弱しきっているけど、まだ息はあるようだ。
「大丈夫? しっかりして」
助けおこしたとき、その顔を見てぞっとした。
ひどくやつれた彼女は、暗闇でもよくわかる、凄まじいまでの美しさをたたえていた。
「名前は?」
いつのまにか横に来ていた殿下が、静かに言った。
「サーモン……ベーリング」
彼女はにらみつけるような強い目で私たちを見た。




