霧の悪夢。
「ん~~……。ん!? な、なにこの霧……」
寝ていた私は目を覚まし起き上がった。
「リーシャ様!」
「ユ、ユリアス? ユリアスなの?」
霧で見えにくいけど、遠くにユリアスがいるのが分かった。
微かに見えるユリアスは、私に手を振り私を呼んでいる。
そういえば私ってユリアスの顔を見た事がない。アカウント連携が面倒で見たことなかったんだ。どんな女性でも恋に落ちてしまう素顔。う〜ん、気になる。
でもユリアスはすぐ前を向いて歩き始めてしまった。
「ま、待ってユリアス!」
私は深い霧の中、ユリアスの後を追う。
でもユリアスは待ってくれない。
一体どうして? どうして私を置いて……行ってしまうの。
走っても走ってもユリアスに追い付けない。
お願いユリアス、私を置いて行かないで……。
その時。
「リーシャ、そっちへ行ってはダメよ」
聞き慣れた声が私を呼んだ。
私が幼い頃に亡くなった母の声だ。
「御母様?」
母は父とは違い幼い頃に少しだけ面識がある。
あらすじでは父、と白地でさらっと出てきただけで容姿すらなかったから。
私はそんな懐かしい母の声を聞き、母の声の方へ向かった。
すると進むにつれ、次第に霧が晴れてくる。
霧が晴れると……。
頬を舐められる感触が!
私は目を覚まし飛び起きる。
「ん!? ム、ムギ!?」
「ニャオ~ン」
なでなで。
「私が起きないから心配してくれていたのね。ありがとう♪」
「ニャオ」
辺りは相変わらず深い霧に包まれている。
そして周囲のどこにもユリアスがいない。
「ねぇムギ。ユリアスを知らない?」
「ニャオ!」
ムギはついてきてと言わんばかりに駆け出す。
止まっては振り返り、私を待ってくれるムギに暫くついていくと……。
少し霧が晴れた場所へ出た。
そこには湖が広がっていた。
こんな所に湖が。
にしても濁っていて汚い。それになんかブクブクブクしてる。
普通こういう時って綺麗で幻想的なはずなんだけど。
あれは?
湖のほとりの側には奇妙な格好をした女性が。
女性は仰向けで横になっているユリアスの側に座り、手の甲で優しくユリアスの髪を撫でていた。
どちらの顔も微妙に見えない。
「ユリアス!」
私は意志に反し思わず叫んでしまった。なんで!?
でもユリアスは気を失っているのか、私の声に反応しない。
「あら? 目を覚ましたのね。意外だわ」
女性の声は物凄く近くで囁いているように聞こえてくる。
女性は冷静に立ち上がり、こちらへ向いた。
女性は美しい人の姿から酷く醜い木の魔物へと姿を変えた。
女性の姿見てムギが低い唸り声をあげ威嚇する。
だがなんとその時! ムギがダッシュで突進し、女性に飛び掛かった。
ムギがチャンスをくれた。
私は透かさずユリアスに駆け寄り声をかける。
でもユリアスは起きない。
こうなったら仕方がない。
私は唇を近付けそっと……。一体私は何をしようとしているの!?
「ん? リーシャ様?」
触れ合う寸前で私はユリアスと目が合う。
「はっ!?」
ギューっと遠ざかる。
「リーシャ様、大丈夫ですか?」
「ユリアス?」
「随分うなされていたようですが。なにか悪い夢でも?」
「い、いいえ……。あぁ……もう日が昇りそうね。ユリアスはずっと起きてたの?」
「仮眠を何度か」
「ありがとう。こういう時、本当は交代なのに」
「気になさらず。慣れていますので。それから、不馴れですが朝食は私が用意しましょうか?」
「ダ~メ。料理は私の仕事で存在意義なんだから。それだけは残しておいてね」
「わ、分かりました。で、では楽しみにしております」
「うんうん♪」
私は立ち上がり朝食の用意を始める。
今日は雲1つない良い天気だわ。
遠くの木の影で。
「両想いでぎこちない恋……。なんだか懐かしいわね。ガジュマル、彼らは大丈夫よ。そっとしといてあげて」
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