新しい屋根の下
ブクブクしてると言って、コップの液体を凝視し続けているアルコン。
でもユリアスが思い切って飲んでくれた。
ドキドキ……少し緊張する。
ユリアスの不安そうな表情が、いつもの騎士らしい表情に戻った。
これは……不思議なお酒ですね。小さな魔法の火花が閉じ込められていたような。とても美味しいですよ。
ホント!? 良かった〜♪
ユリアス、リーシャのお抱え騎士の君が言っても、僕は絶対に信用しないからね。
いいや、本当に美味しいぞ、アルコン。ただ……なんというか……今まで味わった事がない。
ンフフ♪ それは瓶の中でもう一度発酵させた二酸化炭素なの。
リーシャ。相変わらず、なに言ってるか分からないよ。でも僕だって好奇心は抑えられないからね。
アルコンも豪快に……ではなくちょろっと飲んだ。
…………うん? う〜ん♪ 凄い! 口の中が心地よくチクチクして、本当に不思議な感覚だ。
リーシャ様、これはリーシャ様のオリジナルブレンドなのですか?
嫌だな〜ユリアス。そんな大層な物じゃないよ。これはシャンパンっていうの。昔作って、ずっと保存しておいたんだ。
これはとても貴重な体験です。ありがとう御座います。
リーシャってお酒も作ってたの!? 凄いね。
いや〜♪ それほどでも〜♪ んんっ、フルーツが沢山余ってたからね。そのまま腐らせるのも勿体なかったから。
私もコップに注いで二口目を味わう。
ん〜、やっぱり私はお酒は苦手だな〜。でも二人はイケる口みたい。喜んでくれて良かった♪
楽しかった食事も終わり、後片付けへ。
食後、洗い物を手伝ってくれる二人。
アルコンは貴族らしく、初体験で不慣れだった。ユリアスに残った汚れを指摘されて、苦悶している。少し酔ってる? 意外とお酒に弱いのかも。
ユリアスはとても慣れた手つきだった。軍事キャンプで毒を警戒して、マイ食器で自分で洗い物も済ませていたとか。その姿を想像したけど、少しシュールかな〜。
全てを済ませて布団へ。
ユリアスは相変わらず、心配してくれていた。
もし幼少期から森に入り浸っていなかったら、私は虫が出るとか、背中が痛いとかで、生活どころじゃなかったかもしれない。
でも、ユリアスの、毒のある虫がいるかも、という忠告で、ローズマリーの香草などで一応念の為に虫を追い払った。
ここはとて静かで、とても自由。昔の森と一緒。なによりユリアスとムギが側にいてくれる。
アルコンは……構わないって言ったのに、馬車に行っちゃった。
やっぱり眠り慣れた場所がいいのかな? まだ私たちを信用できていないのかも……。
私は色々な事を思い巡らせながら、追放生活で手に入れた屋根の下で、安心して眠りについた。




