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舌上で踊る幸福

どの料理も中々の出来かな。最高と言わないまでも、十分な美味しさ。しかし、改善点はやっぱり、いつも通り山積みね。二人は物凄く良い食べっぷり。見ているだけで嬉しくなる。この瞬間が料理で一番楽しいって言っても過言ではない。

うん、やっぱり悪くないかな。相変わらず食事は最初の一口で心がほどけるぅ〜♪


3人で様々な会話をしながら、まったりと食事を楽しむ。


アルコン、私のフェイスマスクが気になるのか?

それも少しあるかな。

兜を被り、バイザーを上げて食事をする、物々しい姿のユリアス。相変わらずユリアスの顔が私の後頭葉を貫通しているみたい。食時ってのは、敵にとって奇襲にうってつけなんだ。アルコンを人差し指で軽く指しながら話すユリアス。

それより、その輝く鎧が気になってさ。なんていうか……本物の騎士みたいだよね。

面白い奴だな、アルコン。これは忠誠の証なんだ。鎧に片手を当てるユリアス。薄汚れた騎士を連れた貴族など、もはや貴族ではないだろう。

僕の所は舗装されてる場所が少なかったからさ。こう言っちゃなんだけど、なんだか新米騎士に見えるよ。悪気はないんだよ。ホント。降参ポーズのアルコン。

私は今まで、鎧の輝きを見て逃げ出す賊を大勢見てきた。決してこの輝きは無意味ではないんだ。

肩をすくめるアルコン。なるほど。でも相手が動じなかったら?

それはいつもの事さ。フォークに刺してあった、蒸してほぐれたポラスの身を口に運ぶユリアス。


〜鳩〜


においに釣られて起きてきたご機嫌のムギに、パウダーをかけたローストリスをあげる。

尻尾をゆったりと左右に揺らしながら、くちゃくちゃと顔を斜めにして噛み締めながら食べていくムギ。


アルコンがオペラについて尋ねてくる。オペラをテーブルの隅に広げる。オペラに興味津々のアルコン。けどアルコンとは対照的に私の顔をじっと見つめてくるユリアス。

どうしたのユリアス?

いえ。その……。顔をすぐに逸らすユリアス。アクセサリーが、とてもお似合いだと。

これ、眼鏡っていうの♪

そう、ですか。

ンフフ♪ こんな照れた感じのユリアス、初めて見た♡

すーーごい! なにこの文字の迷宮。リーシャ読めるのこれ!? かなり興奮気味のアルコンの声が、私の鼓膜を駆け抜ける。

もちもち。木彫り人形のように鼻を心の中で伸ばす。

真っ白な羊皮紙の初めのページ。

厨房は、物語の始まり。

著者は詩人なの?

高名な一流シェフよ。

リーシャよりも?

そうよ。創作レシピはもちろん、この人はただ美味しい料理を作れるだけじゃなくて、アートのようにするのも得意なの。まさに食べる芸術よ。

抽象的な……こと?

うーん、うーん。そのままよ。仕上げのトッピングに魔法まで使って、まるで絵画のように仕上げたりするんだから。

うーん、いまいち難しくて想像できないかな。

でも素晴らしい芸術が目の前にあって、それは食べると終わってしまう。なんだかそこに芸術の素晴らしさと同時に、なにかこう……尊い儚さを感じない?

ふむふむ。

でね、彼はこう書き記しているの。鑑賞者がカトラリーを差し入れる時、それは完成から崩壊へと向かうカウントダウン。崩され、咀嚼され、舌の上で色彩は風味となり、形は記憶へと変容してゆく。鑑賞者が飲み込んだ瞬間、形あるものは体内で溶け去り、証拠すら残らない。しかし、食べる事とは、アートを破壊する行為ではない。鑑賞者が作品と一体となり、体内でそれを永遠化させる究極の体験。とね。

わお、料理を作るシェフにそんなに奥深い心得があったなんて。僕は今までシェフは味の良さしか求めてないと思ってたよ。そうじゃないんだ。これはとても素晴らしい考えだね。

そうでしょ♪

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