思考の闇。
アルコンは塗装に戻り、天井付近の上側を塗っている最中。
窓を木の板で塞いでいるユリアス。私は釣り具の準備。釘を打つ手を止めるユリアス。リーシャ様。小声でユリアスが話しかけてくる。彼を信用するんですか?
アルコンを疑ってるの? ユリアスの心に暗雲が垂れ込めているのかも。
実は……はい。
少し意外だった。そう…。
信用するが、確かめろです。彼がどうかではなく。この広い森全てが魔法で汚染されているなんて、話が突拍子過ぎだと思いませんか?
確かに。言われてみればそうね。だけど…アルコンが嘘を付いているようには思えない。
仮にアルコンの話が本当だとしても、あんなに古い本なら今は違うかもしれません。どれだけ強力な魔法でも、無限には無理です。諦めず探す価値はあるかもしれません。
そう……よね! ユリアスの言う通りだわ。
大方塗り終えたアルコンが側に来る。
にしてもすごいね。これほど簡単に大工の仕事ができるなんて。ユリアスはアーキテクトーンの才能があるよ。
ありがとう、アルコン。君も芸術家の才能があるよ。まあ、昔はよくやってた事だから。
確かに最初に比べて粗がなく綺麗。あれって思ったより難しいのかな。
「ユリアスは元々大工だったりするの?」
手に職がついていた訳じゃないけど、そう、昔は大工みたいなものだった。
「そうなの!? 今や騎士だなんて、凄い出世じゃない」
「これも全てリーシャ様の父上、アドレド卿のおかげなんだ」
父もユリアスの事を気に入ってた。そうこうしている内に釣り具の準備ができた。合ってるかどうか分からないけど、どうにか形にはなった。この世界にも釣りという概念があって良かった。本がなきゃまったく分からなかった。でもあるのは当たり前か。
さてと、はいこれ。
2人に朝食の時余った食材で作った卵とチーズと野菜のブリトーを手渡す。冷たいけど、食べれるからね。
あ、ありがとう。少し困惑しているアルコン。
リーシャ様、どちらへ?
ちょっと、食材探しに行こうかなって。おっと、忘れる所だった。はいこれも。ローズマリー、カモミール、蜂蜜で作った特製ハーブティーが入った容器を手渡す
だから森は危……。リーシャは水術を使えるの?
そう! 驚くアルコン。ンフ、冗談。ドワーフのよ。
あぁ。そっか。色々な物があるんだね。冷たいだなんて。
リーシャ様、一緒に行きます。
でも疲れてるでしょ?
いいえ、そんな事はありません。
隠していても、疲れているのが分かるよユリアス。
……確かに…そうです。しかし森は危険です。こういう時の為に私がいるんです。同行させて下さい。
なんだか私が嫌らしい主人で、ユリアスの性格を知ってわざと言わせているみたい。そりゃ…少しは聞きたいけど。私だってユリアスの身が心配なんだから…。だって…好きなんだもん。わ、分かったわ。ユリアス。お願い。
お任せを。胸に片手を当て、軽く頭を下げるユリアス。
あの〜、僕も一緒に行っていいかな。
それがここを誰かに……。
いいわよ。準備して。
ありがとう♪ ウキウキで出発の準備を始めるアルコン。
ユリアスが私を見てくる。
私は小さく首を左右に振る。
ユリアスが静かに一度頷く。




