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終焉を奏でる貴公子

エピローグ③

マフィアスが2人の兵士を連れ、開いたドアの前で立っていた。静かに道を開けるリアス。

マフィアスと1人の兵士が部屋へ入り、もう1人の兵士は部屋への入口を塞ぐように立ち、周囲を警戒する。

マフィアスが立ち止まり、リアスの方を見る。リアノス、リーシャの従者だった騎士と剣を交えていたそうだな。奴の腕はどうだった?

かなりの、手練れでした。

行かせたのは正解か、だが、この目で見てみたかった。そうか。

マフィアスがベリーの元へ向かう。

側にある重厚な椅子に、まるで王座にでもついたかのように深く背を預け、軽く足を組む。一見して休息のポーズだが、マフィアスの瞳には情報を探る冷徹な光が宿っている。

マフィアスがテーブルに置いてあった素朴な手編みの小さなムギ人形を捉える。こんな物を…器用な奴だな。毛糸の軋む音が静寂に小さく響く。指先で人形を転がすその仕草は、チェスの駒を弄ぶように優雅で、同時にすべてを破壊できる力を持つ者の不穏な余裕を漂わせていた。愛らしい人形と、冷酷なマフィアの指先。その鮮やかなコントラストが、マフィアスの静かなる支配を物語っているようだった。あいつは無事に、寝床を見つけただろうか。しかしどこか悲しそうな目に変わるマフィアス。

「どうしてリーシャを見逃したのかしら?」

「ロクに魔法も扱えぬ女。その女に縋る騎士。この俺が追い回すとでも思っていたのか?」

「貴方にも情があったのね」

「追放したのはお前だろう」

「お馬鹿ね。貴族にとっては生き地獄の方が辛いのよ。どれだけ貴族と名乗っても誰も信じてくれない。それどころか薄汚い庶民と同じ扱いを受け続ける。それか、国を出る前に魔物に食われて死ぬ。最期に看取ってくれるのが魔物だなんて、ンフフ。グルメな魔物だといいわよね。今日のディナーは当たりだったって思ってくれないと死にきれないでしょう」

相変わらず長話が好きな奴だ「あの女はそんなヤワじゃない。それにアドレド卿の名声は、お前が思っている以上に強い」

「随分ね。それにしてもアドレド…ああ、そんな男いたかしら? いまリーレイは戦争中。国を無事に出られたとしても同じ事。長くは生きれないわ。今日の日まであの子にはまともな教育を受けさせてこなかったから。知ってた? リーシャは森で獣のように生活していたのよ。公爵令嬢の身でありながら、まともに字すら読めない、あんな子、なんの価値もないわ。娼婦としては生きていけるかもしえないけど、生きながらえて奴隷の身に落ちぶれるのを眺めるのも一興よね。今まで味わってきたこの生活が一変するんだから。考えただけで、ゾクゾクするわ」

素晴らしい戯言だ。棺桶に刻めば、死者も呆れ、魔法など使わずとも蘇るだろう。しかし不快だな。

「例の進捗を聞きにきた。それで、どうなんだ?」

「もうすぐとだけ言っておくわ。ほら雄弁は銀、沈黙は金っていうでしょ? 貴方には、とびきりの金でいてほしいの。黙って財布を開く、その瞬間が一番輝いているから」

「結果を出せば、それでいい。だが守れなかった時は…」

怒る?

いや。俺は、お前のその後を心配してるだけだ。立ち上がるマフィアス。

「そうそう。あなたの密偵は行方不明になったらしいわ。情報のお礼はいいから」

マフィアスは目を細めた後。部屋の出口へ向かう「俺も言い忘れていた事がある。死の森で狩人が例のゴーレム、ヘンウェン見たとか。お前は奴と仲が良かったんだろう? 気を付けた方がいい」

マフィアスが部屋を去る。


2章へ。

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