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森に眠る恋の残骸

エピローグ①

柔らかな朝の光が差し込む深い森の奥。深く濃い緑の植物で作られたビスチェを纏い、ひとり静かに佇む女性。

女性の側には鳥達が集っている。一羽の鳥は女性の肩に止まり、時より女性の頬や髪に羽を触れさせていた。


あの二人、今頃どうしてるのかな〜。上手く森を抜けられたのかな。ぎこちない恋は実ったのかしら。それにしてもあの騎士の魂は素晴らしかったわね。決して揺らぐことのない真理の軸を持ちながら、精神の軌跡は何者にも汚されぬ高潔さで包まれていた。きっと彼のエピタフは、この世界を少しだけ高貴にさせてくれる物になるはず。

さぁ小鳥ちゃん達、ごはんですよ~♪

彼女がそっと片手を伸ばすと、鳥達が集まり、地面に置かれた赤く小さな木の実を次々に摘んでいく。

ドスンッ!!

突如として森に響く足音。静寂を切り裂く重い足音は大地を伝い、低い地鳴りへと変化していく。

足音が響いた瞬間、呼吸を止めていたかのように鳥の群れが驚き、一斉に飛び立っていく。しかし鳥達は驚いたにも拘らず、周囲の木々に留まっていた。

女性の目の前に現れたのは巨大な岩のゴーレム。ゴーレムは数千年の風雨に耐えたかのように苔が生え、裂け目からは2つの光点、翠緑色の光が木漏れ日のように出ている。

「エリュー。この森を守るように言ったはずだ」

「お父様。いついらしたのですか?」

「クアルサークルが起動したから見に来たんだ。お前ではないなら厄介な事だ」

「あの遺跡、物置かと思ってましたわ」

「違うのは分かりきっていただろう。まったく、これはお前の失態だ。責任を持って原因を調べてくるんだ」

「行きたくないですわ。だってあの場所は……」

「つべこべ言わずに行くんだ」

「……分かりました」

怯えの目。しかし涙は流さず、息を殺した表情。ゴーレムではなく記憶に苛まれている様子のドライアドのエミューは遺跡に向かって森に入って行く。

鳥達は再びエミューの元へ向かい、そして戯れ始める。

森の木々は自ら幹を曲げ、エミューが進む先に道を作っていく。


もう二度と戻らない日々。振り返れば、ただの遠い夢の記憶。でもあの2人のおかげで忘れていた感情が蘇ってきたよう。私が私をまた見つけられたみたい。やっぱり恋っていいかも。


そんなエミューを静かに見送るゴーレム。

お前の瞳は、まだ見ぬ朝の光を映すためにある。生の終わりを告げる枯れ葉のように、今は運命の風に任せよう。厳しいが許してくれ。

大地から吸い上げた悠久の記憶か、あるい長い眠りから覚めたかのように頭をもたげているだけか。空を仰ぐゴーレム。

しかし、また人間がこの森に来るとは。厄介な事になりそうだ。人間ってやつは、なぜこうも死に急ぐのか。

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