幽ノ助、凍ります
どーも、こんにちは。俺の名前は天ノ川 幽ノ助。つい先日働いていたガソリンスタンドでクビになり、今は工場に勤めている。工場で取り扱っているのは生肉等だ。
「先輩、ここに置いてて大丈夫でしょうか?」と俺は佐原先輩に確認してから、大型冷凍倉庫前にダンボールを積む。
時期は8月真夏の真っ只中で、額から汗が止まらない。こんな真夏でも大型冷蔵倉庫内は真冬の北海道の様に涼しいので、ほんの出来心で涼みたくなるのを我慢する。
朝4時から作業を始めて、気付けば夜の21時を迎えていた。勤務初日から、かなり飛ばした勤務だと思う。またまたブラックな職場だと冷笑する。
それでも中卒を雇用してくれるだけ、ありがたいと思いながら働く。
最後のダンボールを同じように冷蔵倉庫前に置くと、佐原先輩から「ごめん!、ちよっと用事あって早く帰らないといけないから幽ノ助くんだけであと全部倉庫にしまっといて!」と頼まれる。
佐原先輩は颯爽と退勤し、他の同僚や先輩も居ないため積み上げたダンボール100個を冷蔵室に入れる事にした。
「初日からこれかぁ〜…」と嘆きつつも、黙々と冷蔵室にダンボールを手搬送する。
時刻は0時を回ろうとした時、最後のダンボールを冷蔵室に移動させて作業を終える。ようやく帰れると思いながら冷蔵室内からドアを開けようとするも……開かない。まったくびくともしない。
自分が置かれている状況を瞬時に理解し、血の気が引く。先ほどまで暑かった身体も、もうすっかり肌寒さを覚え始めてる。
このままじゃ凍死してしまいかねない…!!、と心なかで叫ぶ。持ち物はライター、バインダー。肝心のスマホは休憩室で充電中なので助けを呼ぶことも出来ない。
工場の稼働は朝4時からなので、3時まで耐えれば社員かバイトがやってくるだろう。
あっという間に体温が奪われていく、主人公は周りに何か無いかと見渡す。大型冷蔵室には多くの冷凍品が保存されており、床や隅、あちこちに積雪の様な霜が積もっている。
幽ノ助は積雪のような状況で霜でかまくらを作ろうと想い至る。バインダーをスコップの様に使い、人が一人すっぽり入るかまくらを作り上げる。防寒性を高めるために内側周囲にはダンボールを積み上げる。それでも尚、寒さには耐えられない…。真夏の灼熱がひどく恋しくなる。
もう無理かと諦めそうになった時、「ガチャン」「バタッ」という扉の開く音がしたので脱出する。気付くと時刻は深夜3時になっていたようだ。退勤して、翌日退職した。




