キャンプ場
夏樹はとあるキャンプ場に向かっていた。そのキャンプ場は、人里から離れた山奥にあり、秘境感あふれ、自然たっぷりな所がいいという。以前から夏樹は、インターネットでそのキャンプ場を知って、行ってみたいと思った。
しばらく走ると、狭い峠道に差し掛かった。その峠道は、何年も整備されていないのか、道路の状態が悪い。ここに並行して走る県道は整備されていて、1車線だ。この峠を越える車のほとんどは、長いトンネルを経由するこの道を走っていく。残念だけど、これが時代の流れなんだろうか? そして、このキャンプ場は忘れ去られていくんだろうか?
しばらく走っていると、川が見えてきた。流れが速く、水がとても澄んでいる。そのまま飲めそうなほどだ。今回行くキャンプ場はその途中にある。川を見ると、夏樹はワクワクしてきた。
さらに進んでいくと、古びた看板が見える。『江川瀬キャンプ場』と書かれている。今回目指すキャンプ場の入口だ。
「着いたか」
夏樹は道を離れ、キャンプ場の川べりに向かった。キャンプ場には誰もいない。すでにみんなから忘れ去られたような場所だ。インターネットにはあるけれど、どれだけの人々がこのキャンプ場を知っているんだろう。あまり知られていないんだろうか?
夏樹は川べりに車を停めた。そして、キャンプの準備を始めた。何度もしているためか、手順が早い。
「さて、始めるか」
次に、夏樹は釣りを始めた。ここは岩魚や鮎がよく獲れる事で知られる。とても魅力的だな。みんなにも教えたいな。だが、なかなか釣れない。こんなもんだろう。すぐに獲れたら、面白くないだろう。
しばらく待っていると、何かが釣れた感覚がした。何だろう。引き上げてみると、鮎だ。今日は塩焼でも食べるか。
「よっしゃ、釣れた!」
夏樹はさっそく塩をまぶして、焼き始めた。釣った魚をすぐ食べる、これがキャンプの醍醐味だと思っている。
「おいしそう・・・」
しばらく焼いていると、程よい状態で焼けた。おいしそうだな。夏樹はそのまま鮎の塩焼きを食べた。
「おいしい!」
夏樹は食べるのに夢中になっていた。本当においしい。自分で釣ったからだろうか? 釣りたてだからだろうか?
と、夏樹は誰かに気付いて、振り向いた。ここにはあんまり人が来ないのに、どうしたんだろうか?
「ん?」
だが、後ろには誰もいない。誰かがいるような感覚になったのにな。どうしたんだろうか?
「誰もいないな」
食べ終わった夏樹は、少し眠くなってきた。ここまで車を走らせて、とても疲れた。ちょっと昼寝でもしようかな? こんな秘境っぽい場所で寝るって、心地よいだろうな。
「疲れたな。ちょっと寝るか」
夏樹は車の中に戻り、昼寝をした。ちょっと休んでから、また頑張ろう。
夏樹は雨音で目を覚ました。全く降らない予報だったのに、どうしたんだろう。まさか、ゲリラ豪雨だろうか?
「あれっ!? どうして・・・」
夏樹は外を見ていた。大雨が降っている。夏樹は信じられない表情だ。
「大雨が降ってる・・・」
と、キャンプ場に1人の男がいる。その男は、増水した川の中に取り残されて、流されそうだが、何とか踏ん張っている。
「助けてー!」
夏樹はそれに気づいて、助けようとした。雨の中、傘をささずに向かっていく。だが、その男は流されそうだ。早く助けないと。
夏樹が男に手をかけたその時、男が流され始めた。そして、夏樹も流された。
「キャー!」
夏樹は目を覚ました。今さっきの夢は、何だったんだろうか? 夏樹は全くわからないようだ。
「何だこの光景は」
と、夏樹は何かに気付いた。なんと、増水した水に流されているのだ。いつの間に、ここに移動したんだろう。夏樹は呆然となった。
「えっ・・・」
その間も、夏樹は流されていく。どうしよう。夏樹は慌てている。
「ギャーーーーーーー!」
ふと、夏樹は岸を見た。そこには、あの男が立っている。あれっ、死んだんじゃないかな? もしかして、幽霊?
「フフフ・・・」
男は不気味な笑みを浮かべている。まるで、夏樹を狙っていたようだ。
「だ、誰・・・」
そして、夏樹は流されていった。その後、夏樹を見た人はいないという。
10年前、このキャンプ場では川に流された男がいて、川に流された日にキャンプを行うと、同じ目に遭うと言われているらしい。