8.
さすがにロルフは自暴自棄になってしまった。自分を支えているものは無くなった。
侯爵夫人の言葉「ラルフが侯爵家の嫡男」。それだけで心が重くなる。
どんどん気落ちする。
ある時使用人がロルフを見た時、もう目は虚ろで所謂廃人となってしまっていた…。
自業自得と言えば自業自得なのだが、そのように周りが育ててしまった影響もあるのでなんとも言えない。
ラルフはその話を聞いてなんとも言えない気分となった。一応晴れて自分が侯爵家の次期当主というわけだが、諸手を挙げて喜ぶようなことではない。ロルフの犠牲の上に自分がいるということになる。
ラルフは殿下の護衛をしている方がずっと気が楽なのだが、侯爵家は継がねばならないようだし、なんだか忙しい。
今更あの両親のもとで暮らすのは、何だか嫌だ。
いっそのこと王都を離れ、領地で暮らそうか?
領地で魔獣が来ようとも、グビーズ・マリウス両師匠の教えで俺は強くなったし、何の不自由もないだろう。
領民の中で心のキレイな女の子と結婚して子を残せば後継の問題はないだろう。後ろ盾が問題なのか?
ここ数年、殿下の護衛をしてきたから俺には‘殿下’というとても大きな後ろ盾がある。
これ以上の後ろ盾は求めない。
だから、王都に残って貴族の令嬢と無理に結婚する必要はないだろう。
という事を、殿下にも報告した。あっさりと「いいよー」と言われた。なんだか捨てられたのか?とか思ってしまう。
俺はその後領地での生活することにした。たまに侯爵としてパーティーに参加しないといけない時もあるが、ごくまれ。主催者が王家の時か?
結婚相手は俺を領地に受け入れてくれた娘を選んだ。
見た目はごく普通。貴族目線のごく普通なので、平民的にはキレイな子かな?
結婚後、その子には悪いけど、年に数回のパーティーのためにマナーを学んでもらった。
ソフィアは数ヶ月後に妊娠が発覚。勉強したのに、パーティーに不参加する理由ができた。俺も便乗して不参加がいい(ダメだけど)。
彼女は無事に男の双子を産んでくれた。二人とも可愛がって、俺とロルフのようなことが無いように育てようと思う。
P.S.
侯爵家からそこまで要らねーよ。ってくらい祝いの品が届いた。あと、畏れ多くも殿下からも届いた。殿下には礼状も書いて送らねば。
グビーズ師匠からもマリウス師匠からも祝いの品が届きました。