6.
「俺…じゃなくて、私は痛いのが嫌だし、家族を失うのも嫌です。敵兵といえども、ただの人間で、隣国の王に命令されているから戦っているだけです。一部戦うのが好きなやつがいるかもしれませんが、それは除外します。
なので、今回敵兵をすべてその家族の元へと送りました」
「お主のやったことが良ならばいいのだが…。敵前逃亡と言われ、隣国の王に処罰されないことを祈ろう」
なんて恐ろしい。
あーもう!面倒だなぁ。王様というやつは、絶対自分は安全なところにいて手を汚さないんだよな。
「陛下!隣国の王をこちらに呼んでもいいですか?」
「お主の魔術でか?」
俺は首肯した。絶対玉座に座ったままで動かないやつだ。絶対持病は痔だろう。
俺は隣国の王を陛下の目の前に呼び出した。
「言いたいことは、直接私に言ってくれないか?土地が荒れたり、兵士の命が亡くなるのは私の望むところではない」
隣国の王はまだ事態が飲みこめていないようだった。
「ここはあなたが戦争を仕掛けた国の謁見の間です。そして、あの方はその国王様です」
俺が代わりに伝えた。
「ぬくぬくと隣国にいたようだが、そこのラルフがこの国にそなたを招待した。そちの要求はなんだ?」
「この国はなんで金とか銀とか鉱山に恵まれてるんだよ?隣国なのに、わが国にはそんなものはない」
なんだ?ないものねだりの八つ当たりで戦争?子供の喧嘩じゃないんだからやめてくれ!
「人徳じゃないのか?そんなことで戦争を起こそうと思ったりするうちはそなたに人徳がないから、金とか銀の鉱山が出ないだろうな」
陛下…、バッサリといきましたね。
「隣国なのに…」
いつまで“隣国”ということにこだわっているんだろう?
「で、そなたはどうしたいんだ?このままだとそなたは戦争犯罪人として処罰対象だが?」
「この国の金鉱山か銀鉱山をちょっと分けてほしい」
「馬鹿だな…。ものの価値を金とか銀でしか見られないのか…愚かな」
隣国の王は戦争犯罪人としてこの国の牢に入れられた。
隣国はこの国の属国になった。
「仕事が増えた~」
と殿下は嘆いているけど、俺は平和なのでいいと思う。