71・アノマリー
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
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すみません、すっかり忘れてました!
指定された座標に着くとそこは孤島だった。水が補給できるので中継地点となっているが、居留者は10人にも満たない。クリエーターの気配は濃厚であったが、それは創造された魔王ミカだからであって、人間は近づかないとわからないと思う。
――フェリスはよくこんなところのクリエーターを見つけ出したな。
と、魔王ミカは感心したが、考え直した。
――島の住人ではなく、フェリスがクリエーターに選ばれたのだ。
このポンコツクリエーターはよりにもよってフェリスに力を与えた。それは偶然では無くて、意図されたものだと悟った。
至上者の気配を感じる。島のものが言う、聖なる岩だ。
それに触ると、時間が停止した。
――フェリスという者に力を与えたであろう。それを奪う方法は無いか?
――無い。我は力を与え、与えられた者はそれを行使するだけ。
――フェリスは使命が分かっておらぬ。真逆の方向に向かっている。止める方法を考え出せ。
――無理だ。力の貸与は不可逆的なものである。どうにもならん。
――フェリスにどのような力を与えた?
――全ての力を。但し、欠損した力は与えられなかった。
――例えば?
――仲間を増やすことなど。彼は孤独なまま任務を遂行せねばならん。
――フェリスは任務について理解しているようには思えないが。
――その知識は到着時に欠損していたので与えられなかった。
――まあ、わかった。フェリスが親になれないと知っただけでも来た甲斐があったわ。そなたには死んで貰う。
――なぜ、今まで私を破壊しなかった?
――知らん。妾も突然破壊せよと言われただけじゃ。前から知っていたのならなんとかするわいの。
――了
――自爆システム起動。コードは「ボイジャー」
――カウントダウン開始、10分以内にここから離れよ……
停止していた時空は元に戻った。魔王ミカは鳥の姿になると上空へと飛翔する。
滑空して眺めていると轟音と共に島の半分が消失してしまった。集落をなんとかかすめる程度に崩落していき、慌てる島民たちが見えた。
―ーとりあえず、クリエーターに言われたことは完遂した。それにしても、クリエーターっていう連中はつまらん奴ばかりじゃ。力だけはあるが。
クリエーターの気配は消失した。後は邪魔者フェリスを排除するだけだ。
――そして、ラウルを不老不死にして、仲良く人族の成長を見守る生活に入るのだ。
魔王ミカの胸の中にほんのりと明かりが灯った。




