70・アノマリー
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王国はあっさり瓦解した。武器が違いすぎた。
銃と砲。
鎧と盾を貫通し、剣も槍も東の大陸の軍に届かなかった。魔王軍を敵に回していたため援軍はどこからも来ない。勇猛で鳴らした近衛騎士団は全員倒れ、王子以下捕らえられた。
王宮に侵入した者たちの先頭にフェリスがいるのを見て、王子は、
――蝙蝠め(この世界にも蝙蝠は居る)
と歯噛みしたが時遅し。長く続いたクリプト王朝はこれにて終わった。
東の大陸の直轄領となった王国に対してフェリスは王位に就く権利を主張したが誰も取り合わない。まあ、政治のド素人に任せるほど東の大陸は未熟ではなかった。
フェリスは不満だった。東の大陸も叩き潰してやろうかと思った。それは全世界を敵に回すということで、「魔王」そのものではないかと思い……
――魔王でいいのではないか? 同じ力を持つミカも「魔王」ではないか?
と、思い始めた。
ここに孤独な魔王が誕生した。
――アノマリーを削除せよ。
執務している魔王ミカの頭に声が響き渡った。この声はクリエーターの声。異常を悟った魔王ミカはすぐさま始まりの丘に向かった。
――呼んだか?
――呼んだ。アノマリーを消せ。
――アノマリーとは何か?
――フェリスである。あやつを消せ。この世界の存亡に関わる暴走をはじめだした。
――人族なのに?
無言。ただ危険というメッセージは痛いほど送られてきている。
――分かった。網に掛かり次第始末しよう。
――その前に廃棄物を破壊せよ。
廃棄物とは故障したクリエーターのことだ。
――どこにある?
――33.249389,130.299639(注:地球では佐賀県庁所在地の座標)
――了解
――待て、自爆システムを起動した方が安全だ。起動名は「ボイジャー」だ。
魔王ミカは、城に戻るとちょっと出かけてくると行って鳥に変身してその島へ向かった。




