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68・解放

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)


後進するのをすっかり忘れていました。

あと、今回の部分で、ラウルに魔法防止のアンクレットを渡すシーンが、先に出版した本の中にあるのですが後のシーンで矛盾するので削除しました。近々に、本の方を修正します。

 フェリスが何をしに来たのか魔王ミカにも謎だったが、置いてきぼりにされた騎士たちを尋問したところ狙いが判明した。


――ラウルを捕獲して人質にする。

「まあ、なかなか良いアイディアだが、ちょっと無理があったかのう。妾なら直接召喚する。フェリスは自分の力がよくわかってないようなだな」と呟いた。


 恐らくそうであろう。フェリスは異世界の1技術(半自動式銃)を取得するので精一杯だったようだ。魔界を構築した魔王に匹敵するものを手に入れるには数千年かかると魔王ミカは思った。


 捕獲した騎士たちは解放され、帰国するように言われた。

――われらに処罰はないのか?

 騎士は戸惑った。死ぬ覚悟で付いてきたのだ。


「なぜじゃ? フェリスに言われて着いてきただけじゃろ。誰も傷ついておらぬ」

 魔王ミカは鷹揚だった。


 騎士たちはぽかんとした表情だったが、自分たちが大いなる存在の前に立っていることを気付いた。自分たちは何か間違ったことを吹き込まれていたと悟った。


 魔王ミカは悪ではない。


 人族は正義が常に自分の側にあると思い込みやすい。


 騎士の一人が兜を脱いだ。その顔はラウルの知ってる先輩だった。

「タレス殿!」

 ラウルが言った。タレスは魔王ミカとラウルに頭を下げた。


「すまぬ、我らは騙されていたようだ。王子に命令されここまで来たが、人質を獲りにこそこそと侵入するというのは騎士道に反する卑怯な業ではないかと思っていたのだ」

「タレス殿、ご状況からすれば仕方ないかと。同情します」

「して、魔王に捕まっているというのは嘘だな?」

「はい、このほどミカと婚約しております。私の意思で」


 魔王ミカが割って入った。

「覚えておくがよい。妾が調べたところじゃと、フェリスは亡国の徒じゃ。野望のため三国同盟を引き裂き、王国を乗っ取ろうとしておる。お主も騎士なら王の盾となれ」


 タレスはハッとして、その言葉に得心がいったようだった。そして、騎士の仲間に向かうと、

――皆の者、この話は内密に。宰相ベース様に相談する。


 王国の宰相ベースは強硬派の王子に従っているが、実は和平派だったのである。あの肩なら話を聞いてくれるだろうという目論見があった。


 そうして、彼らは城から帰途についたのであった。

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