67・侵入
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フェリスは供の騎士と易々と魔王城の前まで来た。隠密の術もフェリスに与えられた技能である。まあ、転送魔法とか、ラウルを直接召喚すればいいとか思いつかないフェリスであったが、この技能を身につけて半年も経ってないし、レクチャーする存在もなかったので旧来の発想そのままであった。
それはともかく、フェリスは侵入に際して騎士に言い含めた。
――お前たちはラウルの運び役に徹するのだ。邪魔者は俺が倒す。
剣を抜き、前進。能力のおかげで見とがめられず城内を捜索……するはずだった。だが、気配に敏感な魔物が警告音を念話で城内中に鳴らした。フェリスだけなら気付かなかったはずだが、騎士までカバーできなかった彼は後から気付いた。
――シンニュウシャアリ! チュウイセヨ!
頭の中の声にラウルは魔剣ガウスを片手に、家族に扉を開けないよう言い含め飛び出した。
そこへ、魔王ミカとネミラが現れラウルと鉢合わせした。
「何が起こっているのです?」
「招かれざる客人じゃのう。目的はわからんが、城に侵入するとはなかなかの者じゃ」
魔王ミカは探知魔法を使った。異形の者が一つ、人族の供が三つ一階に居るのが分かった。
「ラウルよ、出迎えに行くが、お主は妾の後ろに付いておれよ。ネミラはラウル一家の守護じゃ」
そう言って、スタスタと階段を降りていった。後に続くラウル。
廊下の曲がり角で止まる。
――奴らはこっちに向かっておる。いきなり鉢合わせしたらさぞ驚くじゃろう。
ラウルにひそひそと告げる。
それを知らないフェリス一行。気付かれたとはまだ思ってない。そろそろと慎重に進んでいるところだった。今のところ戦闘は起きてない。
フェリスが曲がり角を曲がった瞬間――
「よう、フェリス。よく来たな。何の用じゃ? 妾の城に」
魔王ミカが朗らかな声で問いかけた。
ビックリして思わず後ずさりし、後続の騎士にぶつかる。最後尾の騎士はガシャンと尻餅をついてしまった。
「ま、魔王め。気付かれたか!」
さてどうする。フェリスは考えた。技能は魔王の方が上である。ターゲットのラウルは、後ろに居るのが見えたが、魔王が側にいるので手を出せない。供の騎士をおとりにラウルを捕獲しようと考えて、チラリと後ろを見たところ、この前の戦いと同じく騎士たちが戦意喪失しているのが見て取れた。
――マズい。
すぐさま踵を返してフェリスは逃げ出した。騎士は置いてきぼりである。
フェリスの逃げ足の速さに呆れて見送る魔王ミカとラウルであった。
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なお、結末を「なろう」に掲載するのは半年後になる予定。




