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62・戦後

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)


昨日更新するはずが、うっかり忘れてました(テヘペロ

フェリスは沈思していた。魔王ミカをおびき出す。その考えは正しかった。


 真正面から戦うフリををして分身し、背後から真っ二つにする。この作戦も正しかった。魔王の首を刎ねて一時の勝利に酔いしれた瞬間、胴体が立ち上がって首を元通りに据えたのを見て混乱し、即座に逃げ出したのだ。


 想定外も良いところだった。


 魔王が人間の形をしているから、首を刎ねたら死ぬと思い込んでいたのが大間違いだった。

 自分も首を刎ねられたら同じ事ができるのだろうか?


 一瞬そう考えたが、恐らく無理だと悟った。魔王は人族ではないのだ。

 フェリスは彼方より突進してくるラウルを少しだけ認識していた。話によれば、魔王はラウルという男に懸想しているとのこと。


――化け物がねぇ。人間を愛するなんて。


 ポンコツクリエーターから力を授かったフェリスは自分を人族を超えた者だと自認していた。王族など人族を支配するための手駒に過ぎない。


 フェリスは魔王の攻略法について考える。

――待てよ。魔王の弱点はラウルではないのか?


 ラウルなら勝てそうだ。負けたのは昔の話。今の力があればラウルを人質にして、魔王を屈服させるのも不可能ではあるまい。その手で行こう。


 問題はラウルを魔界から呼び出す方法である。先ほどは手強そうな魔人が数名付いてきたのを確認している。かなり守られていると考えてよさそうだ。


 正面から戦おうとすると、魔王が出てくる可能性が高い。魔王城に忍んで侵入し、ラウルを誘拐するか……


――勇者様、王子様が今回の失態について詳しく話を聞きたいとのことです。

 兵士が王子に言われたことをそのまま伝えて来やがった。ぶち殺してやろうかと思ったが兵士は一応王子の使者という立場でもあるのだ。自重した。


「分かった、すぐ行く」

 身なりを整え、王子の元に向かったフェリスであった。

――魔王を倒したら、次は王子を殺す。

 そう決意しながら。

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