59・待ち伏せ
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まずはフェリスを倒さなければならない。感知魔法を使ってみたが、フェリスの居場所は特定できなかった。
魔王ミカは驚かなかった。彼女自身身を隠す方法を知っている。ポンコツクリエーターからその技も与えられたに違いない。
だが、行動パターンは推測できる。勇者が隠れていては名声も与えられないし、本人の性格からも前線にでてくるだろうと思った。
「フェリスと思われる人間が現れたら妾に伝えよ。そやつの相手は妾がする」
魔王軍の配下に命令を下した。
同時にレムスに捜索を依頼する。99%これで確実に捕まえられるだろう。簡単だ。
3ヶ月が経った。ある程度兵士に新式銃が行き渡り、生産も安定してきた頃。そして春になった。
――王国と東の大陸の同盟軍が魔界に侵攻してきました!
連絡がテルゴウスから魔王ミカへ上奏された。
この3ヶ月魔界でもボディアーマーの生産に励み、魔族たちに装備させていたため、村外は軽微。むしろ、同盟軍を圧倒していた。
――どういうことだ。まるで戦力が魔界に漏れていたようだ。
同盟国の将軍は呟いた。いや、「ようだ」じゃなくて、漏れていたんだけどね。と、戦況を見守っていたテルゴウスは魔法球を見ながら突っ込む。
所詮、人族の戦いかたは老練な魔族にとって稚児同然であった。
不定各要素はフェリスのみ。
魔法球を見守っていた魔王ミカとラウルはフェリスの姿を探したが見当たらない。
「これは陽動作戦じゃな、本隊はどこじゃ?」
魔王ミカがポツリと言った一言にテルゴウスは反応し、
「レムス、本隊を探せ!」
と、命じた。
「魔王様、フェリスは軍隊を隠す力もあるのですか?」
「ないわけなかろう。何を言っておるのじゃ?」
レムスは歯噛みした。思い込みで動いて見逃してしまったようだ。
「まあ、誰しもミスはある。全部隊に警戒せよと伝えよ。手を出さず連絡だけせよ」
魔王ミカは命令した。
ラウルは、側に居たノミスに近づくと、魔王ミカに聞こえないようそっと尋ねた。
――ミカ様になにかあったら私を送り込んでくれないか?
――あなた様になにかあったらそれこそ大変です。
――何かあったらでいい。微力ながら助けたい。婚約者なんだから見捨てるわけにはいかないだろう。
――御意。
「同盟軍はどうやって連絡を取っている?」
宰相テルゴウスが聞いた。レムスは、
「通信機、という機械があります。陽動部隊の動きは伝わっているかと」と答えた。
同時に、本隊襲来の連絡が前線から入ってきたのだった。




