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58・新発明

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 新式銃が出てきたことはレムスが魔王ミカに連絡済みだった。

「ふーむ、半自動式銃か、一気に進化してきたのう」


 レムスが送ってきた試射の画像を見ながら魔王ミカは言った。昔巡った異世界の「M1ガーランド」という銃に似ているなと思った。あまりの進化の具合に魔王ミカは不審に思った。なにかがおかしい。火縄銃から一気に半自動式銃に進化するわけない。


「これを発明したのは何者じゃ?」

 レムスは渋い顔して、

「勇者フェリスが積極的に関与したと聞いております」と答えた。


 フェリスも異世界を覗く事ができるのかもしれない。科学技術を発展させるかもしれないが、その勢いは常軌を逸しているようにミカには思えた。それに、銃だけ発展させても意味は無い。科学技術は全体で進化させるべきだと思う。


「やはりあの男は危険じゃな。正常な進化を阻害しかねない」

 クリエーターも同意見だろう。科学技術の発展は進めるべきである。しかし、歪な形だと却ってその国は自壊しかねない。内戦などで。


 戦争が長引くとブラックホール弾とか開発しかねない。今はその基礎技術がないにしても。

「暗殺した方がよろしいのでは?」レムスが問う。


「出来れば良いが、たぶん奴はもう人族ではない。かなり難しいと思う」

 宰相テルゴウスが憂い顔で異を唱えた。


「そうじゃな。妾が仕留めるしかあるまい」魔王ミカは答える。

 じっと側で付き添っていたラウルが初めて口を開いた。


「私の力では及びませんか? 妻となる人を危険な目に遭わせるわけにはいきません」

「その言葉は嬉しいが、力を与えられたのは妾とフェリスだけじゃ、すまん」

「どちらが強いか聞いても?」

「もちろん、妾じゃ。ひよっこに勝ち目などないわ」

 そう聞いてラウルは安堵した。


「慢心は禁物だよ、ミカちゃん」

 魔剣ガウスが脳天気に突っ込む。


「して、新式銃の対策はいかがしましょう」

 魔王ミカは異世界の戦を思い浮かべた。


「対策はスピードと堅牢な鎧じゃ。竜の鱗を貫通できるはずもなかろう。兵全員にこの銃が行き渡ったら面倒じゃが、魔具を使って軽くて堅い鎧を生産するようにする。材料は教えるぞ」


 フェリスが異世界のボディアーマーを「発明」されると面倒だが、聞いた性格だと、他人の命を気にするようにも思えない。銃をたくさん持たせて人海戦術でやってくる可能性が高い。


「テルゴウス、生産施設を建設する。2週間で稼働できるようにしろ」

「ははっ! エンジニアが要りますな」

「準備せよ。休みを取らせろよ」


 無茶を言う一方で、全ての魔族の母である魔王ミカは部下に優しいのであった。

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