51・捕虜になっては困るので
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
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ラウルと婚約し、戦争も回避できたと思っていた魔王ミカは上手くいってないことに気付いた。和平が上手くいってない。王国と東の大陸が急接近し、魔界に敵対する動きが出てきた。
そして、ラウルとの婚約に抗議する声も聞こえてきた。なぜか王国では、勇者の子孫が魔王城に幽閉されているという噂が流れている。
これは不味い。
そして、新勇者フェリスが暗躍していることがレムスより報告された。その力は人間のものを超えていると。
王国は大したことは無い。竜騎兵など、ワイバーンに魔界に戻るように命令すれば問題ない。馬は魔獣を恐れて進軍を躊躇するだろう。
「ミカ様、私が直に王に説明しに参ります」
そう、ラウルが言ったが魔王ミカは首を振って王国に戻ることを許さなかった。
――前の勇者の二の舞はご免じゃ……
王国に行って魔王を愛していると言ったら逆に人質に取られてしまう。もうあんな目には遭いたくないし、遭わせたくない。そういう意味で人族を信用してなかった。
「主よ、頼むから妾の側を離れないでおくれ。人は、力ではなく情で縛られるものじゃ。二度と会えなくなるかもしれん」
フェリスという者はもう一つのクリエーターによって力を与えられた。故障していたとは言え、その力は大きなものかもしれない。
でも、魔王ミカは思う。一人で互角かもしれないが、もう一人の勇者を育ててきたでは無いか。二人で相対すれば勝てる。前勇者の剣が効くかどうかわからないけど、戦闘力は長年鍛えてきて、その技術をラウルに伝承している。
――さっき力を得たばっかりのひよっこに負けるわけは無い。
勝てる。たぶん。
魔王ミカは確信していた。
「ラウル」
「はい」
チュ。
キスをする魔王ミカ。ちょっと驚くラウル。
「そなたを婿にできてミカは嬉しいぞ。まるで人族のようじゃ」
最初に出会った人族の少女を思い出して言った。恋人を連れてきたとき、二人はデレデレだった。
テルゴウスも侍女ネミラもその初々しさに微笑んだ。考えてみれば、魔王ミカは生涯二度目の恋なのだ、数万年も生きながら。
連載半年分先まで書いてスランプ状態でしたが、生成AIの使い方をマスターしたのでガンガン書き進めます。迷って易占したら「続けると良いことあるよ」と出たので信じることにしました。