5・会談
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騎士と勇者の話をした数日後、東大陸についての会談があった。
大使と書記が簡単に自己紹介すると、魔王側の面々が自己紹介した。
「四天王・北 ラゴス。10万25歳」
「四天王・西 ルーン。10万31歳」
「四天王・東 スオラ。10万42歳」
「四天王・南 ガメール。永遠の17歳」
そう言い切った四天王に、魔王は半笑いで注意した。
「お前ら、ボケるの禁止。真面目な会談だぞ?」
「あ、失礼しました」慌てて四天王の面々が陳謝する。
大使は笑って、謝罪を受け入れた。書記は真面目にギャグを記録しているようだ。
「では、東大陸の連中がちょっかい出してきていることについて」
大使は背景情報を語り出した。
東の大陸には魔力は無いが、技術が進んでいる連中がいて、兵器と練度の高い兵員を武器に、徐々に侵攻しているとのこと。王国騎士団も重装備の鎧が役に立たないほどの貫通力のある兵器に対して損耗が激しく手を焼いているという。魔族の力を貸して頂きたいとのことである。
魔王は考えた。元々王国は勇者などの少数の並外れた人間が戦い、一騎打ちで勝利してきた。総力戦には弱かろうと。
そこに大使が爆弾発言をした。
「連中は『飛行機』という空を飛ぶ道具を使ってきます」
「何? ウチのワイバーンとどっちが強い?」
「どうでしょうか……ワイバーンは育てるのに100年掛かるそうですが、飛行機は作るだけで、操縦士を育てるのも数年かと」
より、速成で作れるのか……。魔王は唸った。
「王都は魔法防壁で侵入はできませんが兵器の強力さには注意した方が良いかと」
大使は暗い顔で言った。
「東大陸は魔法は使えないんじゃろ」ラゴスが言った。「なら突破できんはずだ」
「それで、今回、念のためにご相談に来たのですよ。そちらが東大陸と同盟されてはやっかいですからね」
「両国民とも平和に行き来している現状を見ての発言かな」スオラが注意する。
「まあ、千年前の大戦以降仲良くやっているし、友好条約もまだ有効だ」
魔王は言った。だが、あれは勇者が居ての話で、伝え聞いているように勇者を冷遇したという話が本当なら条約解除してもいいかなと思った。
でも、専制政治とは言え、魔族を束ねる存在がそんなことで掌を返して部下を苦しめるわけにもいかない。魔王の器が問われてしまう。
東大陸の連中が魔界に侵攻してくる可能性もある。早めに叩き潰しておいた方がいいだろう。
魔王は、四天王の面々を見て反対するものがいないと見て取ると、
「よかろう。我が国としても協力する」と言った。