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46・誰も傷つけない剣

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 戻ってきたラウルとの修練は佳境を迎えていた。


「よし、かなり力が付いてきたの。荒削りだが基本は身について居るぞ」


 異世界で学んだ20対80の法則そのままだ。結果の8割は2割の物事を抑えれば達成できる。ラウルは魔王ミカから剣術の主要な技を与えられた。達人の域に達したとはいえないが、魔剣ガウスが補ってくれるだろう。


「は。魔王ミカ様のおかげです」

「ここで、勇者の『誰も傷つけない剣』を教えるとするか」

「!」


「最強の剣は、構えながら『どんな相手にも心よりの愛をあたえようとする気持ち』じゃ。憎いかもしれん、不快かもしれん、それを脇に置いといて、それでもなお相手を尊重し愛する気持ちなのだ」

「それは剣術なのですか。突き詰めると切れなくなるのでは?」


「うむ、まず殺気がなくなる。幼子が母を切れないように、相手も自分も戦う気が失せてしまうのだ」

「なるほど」

「妾がラウルスに相対したときに。妾はラウルスを父とし、夫として感じた。それは魔族の母として創造された妾にとって初めての感情じゃった。ラウルスはラウルスで、妾に計り知れない母性を感じたと行っていたな。ファザコンが目覚め、相手はマザコンが目覚めたわけじゃ」


 魔王ミカはくっくっと喉で笑った。あのときは自分の心の動きにビックリしてちょっと取り乱してしまったのを覚えている。


 そして、相手を運命の人と思った。運命なんか信じなかったのに。


「だから、どんな相手でも愛せ、それが極意じゃ」

「はい」


 敵と戦って勝つことばかり教えられてきたラウルにはにわかに信じがたい話だったが、実際に先代勇者のラウルスは誰も傷つけることなく魔王に相対し魔王ミカを屈服させてしまったという事実がある。


「大切なのは心の使い方じゃ。親しげに笑いかけてくる奴に害をなそうとする人間はおらんじゃろ。それをもう一歩進めて激怒している者を落ち着かせて心を開かせるのじゃ」


「なかなか難しいことのように聞こえます」

「妾も習得するまで数ヶ月掛かった。しかし、その後部下たちからより慕われるようになった。ラウルは見込みがある。精進せよ」


 そして、魔王ミカは胸の中で付け足した。

――お主はすでに妾に愛されておるわ。

全ての著作権は私、葉沢敬一にあり、勝手な書籍化、マンガ化、ドラマ化、映画化などは禁止します。

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