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45・ワイルドカード

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 租界地で三者会談が催されたのはしばらく経ってのことである。それぞれの宰相が集まり、今後のことを討議する。


――さて、どうするか……


 テルゴウスは考えた。三者大筋のことは事前に合意している。王国は帝政が崩れるのを心配しているだけ。一番強い魔界が主導しているので王国も東の大陸も嫌とは言えないだろう。多少の異論があっても丸め込む方針で居た。


 だが、予想とは違って、王国も東の大陸も魔界の提案に反発する姿すら見せてきた。


――なにか不確定要素でも発生したのか?


 テルゴウスはいったん会談を休止して、レムスに問い合わせた。何が起こっているのかと。

 レムスの回答は簡潔だった。


――フェリスという名の新勇者が誕生した。かの者の力は魔王ミカ様を超えると自称しており、実際にその力を見せたとのこと。


 ワイルドカードが発生したとのことだ。

 魔王ミカ様を超えるだと。そんなことは信じられない。あの勇者ですら超えてないというか、別の方法で屈服させたのだ。テルゴウスは混乱した。


――それは、魔王様に伝えているか?

――然り。確認するために「始まりの場所」へと向かったそうだ。


 魔王様はなんと考えておられるのだろうか。

 戦乱がまた再発する予感がした。


 魔王ミカは始まりの場所である丘に居た。自分と同じ力を与えた者がいるのかどうか聞きにだ。


――同じ力を持つ者が複数いるのか?


 クリエーターの答えは、

――そうかもしれない。もう一つこの星に送られた者がいるが、破損報告があり、そのものが作った可能性がある。てっきり停止しているものと思っていたが……

――力はどちらが強いのか?

――力? 力とは何を指している?

――戦った時、どちらが勝つかと言うことだ。

――不明。そもそもそんなものは其方に渡していない。戦闘力は後天的なものだ。そもそも、前の勇者に敗れた件についても力ではなかったのであろう?

――それはそうだが……

――数万年の経験があるのに、ぽっと出の勇者に負けるとでも?

 魔王ミカは納得した。ラウルと二人で立ち向かえば負けることなんてないだろう。

――二人で戦うのか……

 魔王ミカは胸が熱くなった。退屈だったのを忘れていた。

全ての著作権は私、葉沢敬一にあり、勝手な書籍化、マンガ化、ドラマ化、映画化などは禁止します。

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