37・告白
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「ラウル殿を呼べ」
しばらくすると魔王ミカとテルゴウスの前にラウルが来た。
「実は三国和平を結ぼうと思う。東の大陸の科学技術を取り込んで、三国ともに栄え、発展していくことがお互いにいいのではないかと、妾は思ったのじゃ」
「はっ、自分もそう思います」
「勇者も無益な争いはするなと言っておったしの」
古の勇者そっくりのラウルの顔を見ながら言った。
「そこで、ラウルへ王国への橋渡しをお願いしたい。東大陸は妾が説得する。悪いようにはせぬ。むしろ王国に利があるようにしたいと思う」
「ありがとうございます。皆が喜びます」
「東の大陸は政治体制が違うため、ちょっと面倒だがレムスの工作により和平に傾きつつある。よっぽどドラゴンに懲りたと思われる。ふふ」
「私が行って王たちを説得すればいいのですね」
「すまないが頼む」
「まだ剣を交えずに敵を倒す奥義を教えていただいてないのですが」
「和平もその技の一つじゃ。交渉が終わったら戻って来い。教えてやる。良ければ……ああ、一生妾の側に居ろ」
あ、言ってしまった。魔王ミカはドキリとした。これでは求婚ではないか。
「是非もなく、そうして頂けると嬉しいです」
「そ、そうか。そうしてくれ、妾も嬉しいぞ」
今まで気に入った人族はあっという間に別れ、気がつくと死んでいる。勇者もそうだった。色々迷っている暇はないのだ。一期一会という異界の言葉を思い出す。
「この剣をやろう」と、脇に持っていた剣を差し出す。
――なんだ、ミカちゃん、結局、俺を渡すのか。よっぽどその若者を気に入っているんだなぁ。
「うるさい、ガウスは黙っておれ」
「魔剣ガウスを私に? 勇者どのの遺品ではありませんか。いいのですか?」
「使ってこそ剣じゃ。飾り物では無い。お主の肩に乗ってる眷属とともにお主を守ってくれるじゃろう」
「それほどまでして、なぜ私に良くしていただけるので?」
この朴念仁は先ほどの会話が理解できなかったらしいと魔王ミカは気づいた。
「それは……だからじゃ……」
「は?」
「お主が好きだからじゃ! 何度も言わせるな」
「ああ」
お互い見つめ合って真っ赤になる二人。
よこで見ていたテルゴウスが、コホンと咳払いすると、
「では、ラウル殿は王国に話を付けに戻っていただいて、我々は東の大陸に和平を提案して、まとめると言うことで」
――千年前みたいだね、ミカちゃん。
魔剣ガウスがボソッと呟いた。
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