35・三国同盟
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演習を見て魔王ミカは東の大陸の軍事力に感心した。自走する兵器。火薬を詰め込んだ砲や爆弾。飛行機と軍艦。使い手の技量に依らない兵器は上手く使えば魔族と互角に戦える。
ただ、東の大陸の軍が想定している練度は魔界の現状とはかけ離れている。正面からぶつかったら魔界の方が強いだろう。まあ、王国はひとたまりも無いのはわかっているが。
千年前の大戦で東の大陸に逃れた人族が大きくなって戻って来ようとしている。
魔王ミカはイメージ球でテルゴウスと連絡を取った。
――魔王様、東の大陸はどんな感じでしょうか?
とりあえず、見聞きしたことを伝える。その上で、潰すか、三国和平にして文明化を進めるか相談する。
――魔族はもしかして人族の発展を監視して必要以上に文明化させないようにするために生まれてきたのではないかと考えておる。
――魔族すべての母である魔王様しか知らないことでしょう。問題は誰がそう望んだのか、です。創造主がいるという話になりますので。
――始まりの丘に戻らないといけないようじゃな。手がかりがあるとすればそれだ。テルゴウスの意見はどうじゃ?
――私としては三国和平案に賛成です。魔族も文明化の恩恵を受けるでしょう。将来他の星に行けると思うとワクワクします。
――妾一人なら今でも行けるのじゃが……まあテルゴウスたちが行きたいというのならそれでもよい。
――ラウル殿と一緒に行きたくありませんか?
――そう言われるとそうだな。
――戻ってきてください。ラウル殿もミカ様の安否を気にしております。
そうは言っても生まれてこの方他者より身を傷つけられたことはない魔王であった。まあ、勇者が亡くなったときに非常に悲しんだが。100年ほど引きずっていて治世をテルゴウスに任せっぱなしの時期があった。
――妾がラウルを心配する方じゃ。
また大戦争になってラウルを失っては敵わない。三国和平の道を選択すべきように思えてきた。
だが、王国の今の勇者フェリスはそう考えてなかった。逃げ出した東の大陸を平定し、魔王を倒すという野望に溢れていたのだ。実力は伴っていないが。
フェリスには小才があって王に成り代わろうと考えていた。そのためには魔王が邪魔。東の大陸と和平を結び、魔王を倒せば王位は目の前になる。姫を妻とし、王位を簒奪するつもりだった。
フェリスの動きは魔王軍には感知されてない。それが利点と言えば利点だった。
民衆に人気があるので、水面下で東の大陸と和平交渉を始めていた。もちろん、王国の承認はない。後から付いてくると確信しているのだった。
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